読み込み中...日本では江戸時代に蘭語(らんご)という呼称が使われていたが、現在はあまり用いられない。
現代のオランダ地方では、古くはフランク系のゲルマン語の一方言が話されていた。ブルゴーニュ公国の下で政治的に統一されたのは中世後期に入ってからで、フランドル地方(北海沿岸)とブラバント地方(オランダ南部からベルギー北部)の方言が最も優勢であった。1600年ごろになって、オランダ語訳聖書を作成するため、オランダ語をひとつにする必要性が生じた際、いくつもの方言のうちホラント地方の方言を中心に組み立てられた。これが現在のオランダ語の基礎になった。
オランダ語は、言語学の分類上は広義のドイツ語(狭義のドイツ語を包含するゲルマン語の一派の総称)の一方言とされる。
諸方言を含む広義のドイツ語は、低地ドイツ語・中部ドイツ語・高地ドイツ語に分けられるが、オランダ語は低地ドイツ語の西部方言から形成されたものである。(標準ドイツ語は中部ドイツ語の東部方言に基づく。)オランダ、フランデレン、スリナムの各政府は、オランダ語連合(Nederlandse Taalunie)を結成し、言語活動に関する政策を共有化している。この機関によって定められた標準オランダ語(Standaardnederlands、旧称 ABN: Algemeen Beschaafd Nederlands)は、それぞれの国の教育・政治・放送などの場で使用されている。
フラマン語はベルギーで話されているオランダ語諸方言の総称である。フラマン語はベルギーのフランデレン地域で話されているオランダ語と、オランダ本国で話されているオランダ語と区別するために使われるが、独立した一言語ではなく、オランダ語の諸方言という社会言語学的な分類にすぎない。近年ベルギーにおいては“Vlaams”(フラマン語)を“Nederlands”(オランダ語)に言い換えることが公的に推奨されている。
オランダとベルギーの国境にまたがるリンブルフ地方で話されるリンブルフ語は学術上は独立した言語とみなされるが、政治上はオランダ語の一方言として扱われる。
アフリカーンス語は南アフリカとナミビアで話され、主に16世紀のオランダ語の方言から派生した。オランダ語(低地ドイツ語)の方言とする見方と、きわめて近縁ながら別の言語であるとする見方があるが、実情はその中間である。
アフリカーンス語には多くのマレー語、バンツー語、英語からの借用語があるため、それらの語彙は標準オランダ語(及びそれにきわめて近い低地ドイツ語)話者には理解しづらい。この点を重視すれば、アフリカーンス語はオランダ語(低地ドイツ語)の方言でなく、その派生言語であるといえよう。しかし同時にアフリカーンス語の文法は、オランダ語のそれを簡略化させたものであり、基本的な語彙はなお多く共通しているので、上記の借用語を理解しさえすれば、オランダ語、低地ドイツ語話者はアフリカーンス語話者と容易に相互理解が可能である。そのためアフリカーンス語は、いまだオランダ語の方言としても充分なほどのオランダ語との一体性を保っているともいえる。
オランダ語はラテン文字を用いて表記する。
オランダ語のつづりに特有の「ij」は慣習的に1文字のように扱われ、語頭で大文字にする場合には「IJzer」のように j も大文字にする。
連母音と二重母音と区別するために分音記号(¨)が用いられる。また、強調や同じつづりの語の区別のため鋭アクセント符号(´)が用いられることがある。例えば「een」は不定冠詞と数詞「1」の両方の意味を持つが、数詞であることを明示したい場合にはアクセント符号を付して「één」とする。
オランダ語の正書法は近代では1946年に改革され、政府発行の"Woordenlijst Nederlandse Taal"、通称"Groene Boekje"(それぞれ、「オランダ語の単語リスト」、「緑色の小冊子」の意)によって公式なつづり方が示されている。
1995年には、つづり方に揺れがあった複合語や外来語の統一基準などを含む新正書法が公布されている。これにより Groene Boekje も改訂され、最新版は2005年に発行されている。
| オランダ語の単母音 Wikipedia画像へのリンク(right) |
| オランダ語の二重母音 Wikipedia画像へのリンク(right) |
| つづり | 発音 | 単語例 |
| a(閉音節) | bad (入浴) | |
| a(開音節), aa | [a?] | zaad [za?t] (種) |
| e(閉音節) | bed (ベッド) | |
| e(強勢なし) | [?] | de [d?] (定冠詞) |
| e(開音節), ee | [e?]1 | beet [be?t] (噛むこと) |
| eu | [ø?]1 | neus [nø?s] (鼻) |
| i | 2 | bit [bıt] (少量) |
| ie | [i] | biet [bit] (甜菜) |
| o(閉音節) | bot (骨) | |
| o(開音節), oo | [o?]1 | boot [bo?t] (ボート) |
| oe | [u] | hoed [hut] (帽子) |
| u | hut (小屋) | |
| uu | [y] | fuut [fyt] (カイツブリ) |
| ei, ij | 3 | ei (卵) wijn (ワイン) |
| ui | [œy] | ui [œy] (タマネギ) |
| au, auw, ou, ouw | faun ファウヌス(牧神) zout (塩) |
| つづり | 発音 | 単語例 |
| p, b(語末) | [p] | pen (ペン) |
| b | [b] | biet [bit] (甜菜) |
| t, d(語末) | [t] | tak (枝) |
| d | [d] | dak (屋根) |
| k | [k] | kat (ネコ) |
| m | [m] | mens (人) |
| n | [n]1 | nek (首) |
| ng | [ŋ] | eng (怖い) |
| f | [f] | fiets [fits] (自転車) |
| v | [v]2 | oven [ov?n] (かまど) |
| s | [s] | sok (靴下) |
| z | [z]3 | zeep [ze?p] (石鹸) |
| ch | [x]4 | acht (8) |
| g | [x]4 | gaan (行く) |
| r | [r]5 | rat (ネズミ) |
| h | [h] | hoed [hut] (帽子) |
| w | wang (頬) | |
| j | [j] | jas (コート) |
| l | [l] | land (土地) |
sch は s + ch とみなし[sx]と発音されるが、語尾では[s]となる。
[g]、 そのほか、 sj は、 tj は[c]、 nj はと発音される。(オランダ語の音韻学上これらは単独の音素ではなく、それぞれ/s/+/j/、/t/+/j/、/n/+/j/の異音とみなされる。) (声門閉鎖音)が母音から始まる音節の頭に現れる。(オランダ語においては単独の音素とみなさないのが一般的である。)同化作用のために、次の語の語頭の子音はしばしば無声化する。例えばhet vee(the cattle)は/h?tfe/になる。この無声化プロセスは一部地域(アムステルダム、フリースラント)では極端になり、[v], [z]及びがほぼ完全に無くなる。さらに、南部では、これらの現象が語中でも起こる。例えば、logenがloochen → [lox?]。フランドルではgが口蓋化する(軟g)ため、この差はより大きめである。ただし、本来の有声音である/v/, /z/は/f/, /s/より発音時の息の出し方が弱い傾向にあり、無声化しても音素の対立はある程度認められる。
低地ドイツ語から生じたオランダ語は第二次子音推移を受けていない。そのほかに独自の変化も見られる。例えば、-oldや-oltで終わる語はlを失い、二重母音化した。比較すると、英語 old, ドイツ語 alt, オランダ語 oud のようになった。/u/を持つhus(「家」)のような語は、まず/y/を持つ huus に変化し、続いて二重母音/œy/を持つ huis に至った。音素/g/は失われて有声軟口蓋摩擦音 になったり、またフランダースやリンブルフなど南部では有声口蓋化摩擦音になったりした。
法と時制には、直説法(現在形、過去形、未来形、現在完了形、過去完了形、未来完了形)、仮定法現在形、命令法がある。ドイツ語と異なり、仮定法(ドイツ語の接続法に相当する)はあまり用いられない。
動詞は主語に応じて人称変化する。1つの主語に複数の動詞・助動詞が対応する場合、人称変化するもの(定動詞)は1つだけであり、他は不定形のままになる。ドイツ語と同様に、分離動詞と非分離動詞が存在する。英語のto不定詞、ドイツ語のzu不定詞に相当するte不定詞も用いられる。分離動詞のte不定詞は、ドイツ語とは異なり、「分離接頭辞」+te+「動詞本体」を離して書かれる(例「到着すること」:独anzukommen、蘭aan te komen)。
平叙文の主節(主文)では、動詞(または助動詞)を必ず文の2番目に置くという語順(V2語順、定形第2位の原則)をとる。主語は1番目に置かれることが多いが、1番目に別の要素を持ってきてもよく、その場合は主語は3番目、すなわち動詞の後ろに置かれる。1つの節の中に複数個の動詞が用いられる場合や、動詞に助動詞が付く場合は、主となる動詞(定動詞)または助動詞のみ人称変化して2番目に置かれ、他は不定形のまま文末に置かれる。ドイツ語とは異なり、助動詞は動詞の前に置かれる。決定疑問文("Ja"「はい」、"Nee"「いいえ」のいずれかで答えられる疑問文)では、動詞が1番目、主語が2番目に置かれる。補足疑問文(疑問詞を用いる疑問文)では、疑問詞が1番目、動詞が2番目、主語が3番目に置かれる。
従属節(副文)では、動詞や助動詞は節の最後に置かれる。従属節が主節の前に置かれる場合は、従属節の直後に主節の動詞が置かれる。(従属節全体を主節の1要素と見れば、その次に来る主節の動詞の位置は文全体で見れば2番目である。)名詞の性に関しては、ドイツ語では男性・女性・中性の3クラスに分かれているのに対し、オランダ語では男性と女性が文法上の区別を失って通性(共性)と中性の2クラス化している。ただし、非常に堅苦しい文章では、単数の女性名詞を受ける代名詞は、男性名詞を受ける代名詞と別のものを用いることがある。このため、オランダ語の辞書には今でも男性・女性の区別が掲載されている。
また、代名詞以外の名詞の格変化は、かつてはドイツ語と同様であったが、現在は3語以上からなる固有名詞や一部の定型句に残るのみである。格を表す役割は、語順と前置詞が果たすことが多い。
形容詞が名詞を修飾する場合、形容詞が名詞の前に置かれ、不特定単数の中性名詞を修飾する場合を除いて、形容詞に語尾eがつく。
性が通性(共性)と中性の2つとなったことや、格変化がほぼ消滅したことなどは、北ゲルマン語群のデンマーク語・ノルウェー語・スウェーデン語などと共通している。
地理的関係上、オランダ語にはフランス語からの借用語が多い(しかし英語がフランス語から受けた影響に比べると少ない)。近年英語からの影響は強く、借用語の数は増加している。"überhaupt"や"sowieso"のようなドイツ語から取り入れられたものもある。
江戸時代の長崎貿易を通じてオランダ語から多数の語が日本語に取り入れられ、今日もなお身近に使用されている。幕末の日米和親条約など欧米列強との交渉や文書においても、オランダ語は共通語として用いられた。
オランダ語やオランダ人のことを英語ではDutch(ダッチ)と呼ぶ。この語はDuits(オランダ語で「ドイツ語」「ドイツの」の意)と同源で、もともとはドイツ語(とオランダ語を含む諸方言)を意味していたが、オランダの海外進出が著しくなった17世紀頃からオランダ語やその話者のみを指すようになった。なお、ドイツ語では「ドイツの」は deutsch、「ドイツ語」は Deutsch(e) である。
日本におけるオランダ語の学習は明治時代以降も細々と続いた。これは当時のオランダ領東インド(現在のインドネシア共和国に相当する)との交易関係によるところが大きい。学習者の必要に答える形でオランダ語―日本語、または日本語―オランダ語の辞書が編まれた。。