読み込み中...クローンは、同一の起源を持ち、尚かつ均一な遺伝情報を持つ核酸、細胞、個体の集団。もとはギリシア語で植物の小枝の集まりを意味するκλών から。1903年、ウェッバー (H. J. Webber) が、栄養生殖によって増殖した個体集団を指す生物学用語として定義した。また、本来の意味は挿し木である。
植物については、古くから挿し木などのクローン技術が農業、園芸で利用されている。体細胞を材料とするクローンはメリクロン栽培として実用化されている。
野生植物でも、栄養生殖は行われる。匍匐茎をのばして増殖する植物は、往々にして群落を形成するが、それらは同一のクローンから構成される。竹林はその例である。
また、遺伝子をクローニングすることは、インシュリン等さまざまな有用物質を生産する遺伝子工学や生物工学において、不可欠の技術となっている。
植物とは異なり、高等動物では、分化の進んだ体細胞や組織を分離してその細胞を動物個体に成長させることは、いまだにできていない。分化の進んでいない(つまり多分化能を維持した状態の)受精卵ではそれが可能で、1891年ドリーシュはウニ卵の分割により正常なウニ幼生を発生させ、これは初めて人工的に作製された動物個体クローンであった。 世界最初のクローン動物は、1952年にR.BriggsとJ.J.Kingがヒョウガエルの初期胚の細胞や核を、不活化した未受精卵に移植することにより作られた。哺乳類では1981年に Willadsen がヒツジで同様な手法により受精卵からクローン個体を作り、Willadsen はさらに1986年ヒツジ初期胚から核移植によるクローンを作製した。
動物の体細胞クローンは1962年にガードンによりアフリカツメガエルのオタマジャクシから核を移植することで作製されている。1996年7月にキャンベルらによってヒツジ乳腺細胞核由来のクローン(ドリー、2003年 2月14日死亡)が作られ、これは哺乳類の体細胞から作られたという点で注目を集めた。
分化した体細胞からクローンを作製するには,分化した核を飢餓状態に置き、細胞周期を停止させる。その後核を除去した未受精卵と電気的刺激を与えることにより細胞融合を起こさせ,その後発生を促すことにより体細胞由来のクローンの胎子(胎子は生物学上の用語)を作ることができる。この方法により、1998年、ウシにおいてもクローン個体の成功が報告された。その後、1998年 Wakayama らが、体細胞を直接核を除去した卵子に注入することにより、細胞融合を行わずクローン個体を作製できることをマウスで報告し、このホノルル法が現在、クローン作成法のスタンダードとなっている。これらの方法を用いて、その後、ヒツジ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ブタ、ネコ、ラットなど多くの哺乳動物で、体細胞由来のクローン作製の成功例が報告されている。さらに2005年には,哺乳類において最も生殖工学の適用が難しいと考えられていたイヌでのクローン作製が,韓国の研究者グループによって報告されたが、このイヌのクローンについて発表したソウル大学の黄禹錫教授らに関して、2005年末に発覚した『ヒト胚性幹細胞捏造事件』(ES細胞論文の捏造・研究費等横領・卵子提供における倫理問題)を契機に過去の主だった論文の精査が行なわれ、それまでの黄禹錫の発表成果のうち結局イヌクローンのみが成功したと立証された。
ヒトのクローンはいまだ成功していないとする考えが一般的ではあるが、公にされることなくすでに作成されている可能性を完全に否定することはできない。しかしそれは、非存在を証明することは困難を極めるという例の一つでもある。2006年現在、ほぼすべての動物のクローン体には何らかの欠陥(エラー)が報告されており、この技術を人間に適用するのは、倫理的な問題以前に技術的な問題があるとされている。たとえば、細胞の分裂に必要なテロメアの長さが短いことがわかってきている。そのため、クローン体は通常より寿命が短い可能性も否定できない。
「クローン人間」というと、「自分と姿・形が全く同じ人間」というイメージが一般にあるが、仮に自分のクローンを作る場合、核移植した細胞を仮親の子宮に着床させ、妊娠・出産することにより作られるため、現在の自分とは年齢のギャップが生じる。
また発生生物学的にも血管のパターン(配置構造)や指紋などは後天的な影響によるものと考えられており、生体認証の上で利用される血管パターンや指紋の同一な個体の発生率は遺伝的に異なる他の個体と同程度であると考えられている(ただし認証手法によって技術的に同一と判定される率は変化する)ことから、クローン体を用いて生体認証のコンピュータセキュリティを突破しようとすることは現実的ではない。ウシクローン体では、鼻紋が元個体と違うことが確認されている。
なお、個体全身を作製するクローンではなく、体細胞クローン技術やその途中経過である移植者自身の体細胞より発生した幹細胞を利用することで、臓器を複製し機能の損なわれた臓器と置き換えたり、あるいは幹細胞移植による再生医療も研究されている。
また、日本におけるクローン技術規制法のように、世界各国でヒトクローンを禁止する枠組みができつつある。理由としては、先ほど出たような寿命が短いというような問題の他に、外見の全く一緒の人達が何人もいると、社会制度上大変なことになる、優秀な人間のクローンをたくさん作り優秀な人間だけの軍隊を作る、独裁者がクローンで影武者を立てるといった人道上許されないことが起こるから、ということが挙げられるが、上記のように根本的に不可能なものがある。
このような禁止措置はES細胞、iPS細胞などの生命科学の発展の障害となる可能性があり、考え方の対立が問題となっている。
動物における一卵性多胎児は天然のクローンと言える。