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ゲルマン祖語

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ゲルマン祖語(ゲルマンそご、)は、インド・ヨーロッパ祖語(印欧祖語)から分化した言語の一つであり、ゲルマン語派に属する英語ドイツ語オランダ語デンマーク語ノルウェー語スウェーデン語アイスランド語などの祖先の言語(祖語)である。文献が全くないので他の言語の知識から復元(再構)して考察されている。

音韻

子音

子音 両唇音 歯茎音 軟口蓋音 両唇軟口蓋音
無声閉鎖音
無声摩擦音
有声摩擦音
鼻音
歯茎摩擦音
流音, 半母音

摩擦音の , , は音素でなく異音であるので閉鎖音と区別せずに , , と書く場合も多い。

グリムの法則

  • グリムの法則は、ゲルマン祖語が印欧祖語から分化するときに破裂音に起こった重要な変化である。紀元前6世紀頃から紀元前2世紀までにかけて起こったとされる。
グリムの法則
  破裂音から
摩擦音
有声音から
無声音
有気音から
無気音
唇音
歯音
軟口蓋音
唇軟口蓋音

ヴェルナーの法則

  • 無声摩擦音 (, , , ) はアクセントのない音節に続くとき有声化してそれぞれ, , , になる。
  • *言い換えると語頭またはアクセントのある音節に続くときに無声のままである。
  • *ここでいうアクセントとは印欧祖語を引き継いだ位置の変わるアクセントである。
  • *ヴェルナーの法則の変化の直後に第一音節に強勢がある現在のようなアクセントになった。
  • *アクセントの変化の後 の有声のが音素になった。
  • *有声の , , は, , と混同されることがある。

母音

  前舌 中舌 後舌
 
半狭  
狭めの広    
   
  • 短母音4つ(, , , )、長母音5つ(, , , , )がある。詳しい音は不明である。
  • 印欧祖語の はゲルマン祖語で になり、 になった(スラブ語にも類似の変化がみられる)。
  • はそれぞれ , のように番号をつけて書かれることもある。復元した単語の数が少ないこともあり () の音価は不明である. 言語学者のクラーエ(Krahe)の説では と同じ音であるとし、印欧祖語の または が二重母音から単母音へ変化している途中を表しているのではないかとしている。「エー」に近い音が二つあったことはルーン文字(古層)に二字あること(?と?)と合致する。
  • 強勢のない音節に来る母音は祖語末期から減少しはじめ、各言語で変化をたどった。

語形

名詞形容詞主格対格属格与格具格呼格の6つの格がある。

代名詞副詞にわずかに所格奪格の名残が見られる。具格呼格は複数形が不明である。具格西ゲルマン語呼格ゴート語のみにのこる。

動詞代名詞には単数、複数形にくわえ双数形がある。代名詞の双数形は三群の古層まで続いたが動詞はゴート語のみに残る。名詞形容詞の双数形は記録上の最古の年代より前に消失した、あるいはイタリック語派と同じくゲルマン語派に分派する前にすでになかったと推測されている。

動詞の活用の体系

ゲルマン祖語の動詞は
  • 法:直説法、接続法、命令法(接続法は印欧祖語の希求法に由来)
  • 態:能動態、受動態(受動態は印欧祖語の中動態に由来)
  • 時制:現在、過去(過去形は印欧祖語のアオリストと完了に由来)
  • 主語の人称と数:1、2、3人称と単数、双数、複数の組み合わせの9とおり

によって変化する。未来形がないのが特徴である。

名詞

  • 名詞の変化は大体印欧祖語の体系を引き継いでいる。語幹によって型, 型, 型, 型, 型の五種類に分類される。
  • 前三者 型, 型, 型は形容詞の変化形と同じなので特に重要である。他の種類の名詞もこの型に影響されることがある。
  • 型, 型はさらに型、型、型、 型とそれぞれ二種が属する。
  • 型の名詞は型(男性), 型 (女性、中性), (大部分は女性の抽象名詞)型がある。
  • 数は少ないが他に語根名詞 (子音で終わる)、親族名詞(で終わる)、 型の中性名詞 (ドイツ語ではこの型が一般化した)、 現在分詞など で終わる名詞がある.
  • 中性名詞は男性・女性名詞と異なり、主格対格が同形である。
  -a-幹名詞 -i-幹名詞
単数 複数 単数 複数
主格
対格
属格
与格
呼格
具格

形容詞

形容詞は修飾する名詞と性、数、格が同じ形をとる。特定のものを表す形(強変化)と不特定のものを表す形(弱変化)の二種類がある。特定のものを表すことからドイツ語では弱変化形を名詞に指示代名詞や定冠詞がつくときに用いるようになる。"強"変化"弱"変化という名称はドイツ語英語など後代の言語を意識してつけられたものであるが、祖語をはじめゴート語などでは語尾に大きな差はない。強変化は型 と型、弱変化は型の変化を行う。

  強変化 弱変化
男性 女性 中性 単数 複数
単数 複数 単数 複数 単数 複数
主格
対格
属格
与格
具格

指示詞

ゲルマン祖語では指示形容詞と指示代名詞の区別はなく、後に定冠詞、指示代名詞に分化する。

  男性 女性 中性
単数 複数 単数 複数 単数 複数
主格
対格
属格'''
与格
具格
所格

関連項目

参考書籍

  • Antonsen, E. H., On Defining Stages in Prehistoric Germanic, Language 41 (1965), 19ff.
  • Bennett, William H. (1980). "An Introduction to the Gothic Language". New York: Modern Language Association of America.
  • Campbell, A. (1959). "Old English Grammar". London: Oxford University Press.
  • Krahe, Hans and Meid, Wolfgang. Germanische Sprachwissenschaft, 2 vols., de Gruyter, Berlin (1969).
  • Lehmann, W. P., A Definition of Proto-Germanic, Language 37 (1961), 67ff.
  • Ramat, Anna Giacalone and Paolo Ramat (Eds.) (1998). The Indo-European Languages. Routledge. ISBN 0-415-06449-X.
  • Joseph B. Voyles, Early Germanic Grammar (Academic Press, 1992) ISBN 0-12-728270-X
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