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シダ植物

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より

シダ植物(シダしょくぶつ、羊歯-、歯朶-)は、植物界シダ植物門に属する植物、またはシダ植物門に加えてヒカゲノカズラ植物門トクサ植物門も含んだ植物を指す。後者の意味で用いられる場合が多く、たとえばシダ植物図鑑といえば、この三つを含んだものしかない。ここではこれらを総合して説明する。一般的なシダ類についてはシダ植物門を、それ以外の群については各群の項目を参照されたい。

特徴

これら3つの門は、それぞれに性質は違うものの、共通の性質もある。それは、次のようなものである。

#維管束植物である。 #種子を形成しない。 #胞子を主な散布体としている。 #配偶体と胞子体という2つの体があり、世代交代を行う。

#胞子体が主な生活形態だが、配偶体(前葉体)も一応独立生活している。

これらは、植物界にあって胞子体を発達させて維管束を持つようになった群のうち、種子植物以前の性質を共有するグループと言ってもよいものである。我々は種子植物を中心に見がちなので、それ以前の植物、という感じで、それぞれの差異に目を向けるより、共通性を意識してまとめてしまった、と言っていいだろう。系統的には単系統の可能性はあるが、内部に維管束植物を含んでしまう側系統の可能性が大きい。

なお、これらの仲間をすべてシダ植物門に統合する説もある。

系統関係

シダ植物がどのように進化してきたかについては、不明な点が多い。緑藻類のどれかに起源があるものと思われる。車軸藻類がもっとも近縁であるとの説が有力視されている。

シダとコケの関係についても、諸説がある。シダにおいて、前葉体から幼い植物体が生長を始めるところと、コケにおいて植物体から胞子のうが伸びるところとは相同であると見られるが、これを共通の祖先から別れたと見るか、どちらかからもう一方が進化したと見るか、それぞれに支持するものがいる。また、シダ植物が多系統である可能性も指摘される。

いずれにせよ、シダ植物は大きく小葉類大葉類に分けられる。前者からはマツバラン類とヒカゲノカズラ植物門が生き残り、後者からはシダ植物門トクサ植物門、それに種子植物が進化してきたと考えられている。シダ植物門には高木になるものが含まれるが、それ以外の類はいずれも小柄な植物である。しかし、それぞれに古生代には大きな樹木のようになった先祖があり、いずれも多くの種を抱えていたとされる。したがって、現在の状態はいくつかの系統の、それぞれごく一部のものが小型化して生き延びた姿とも見られる。

また、裸子植物、被子植物も単系統と考えられているから、シダ植物のうちどれかの系統からそれらが発展したものであろう。いわゆるシダ植物は、それを含んで、より発展した体制に進化しなかったほかの系統も含む群である。その点で、脊椎動物における爬虫類の位置に似ている。

ここではその全体を見渡して系統上に問題になりそうな特徴を取り上げてみる。ここで取り上げる群は、おおよそ以下のような構成になっている。

体制について

シダ植物は維管束植物であり、いわゆる根・茎・葉があると言われる。しかし、この点から見直さねばならない例もある。
根も葉もないもの
マツバラン類は、ほぼ全体が茎のみからなり、分化した根も明らかな葉もない。そのため、かつてはそれらが分化する前の原始的なものの生き残りと考えられた。現在ではヒカゲノカズラ植物門に含めるが、より発達した群から退化的に生じたとの説もある。
担根体
クラマゴケ類とミズニラ類に見られる構造で、茎に似ているが、葉を生じず、地中に向かって伸び、その上に根を生じる。クラマゴケ類ではほぼ根に見える細長いものであるが、ミズニラ類では短く詰まった形である。
担葉体
ハナヤスリ類に見られる構造で、茎に見えるが限定成長を行い、その上に胞子葉と栄養葉をつける。

葉の構造は、大きく大葉小葉に分かれる。前者は大きく広がった葉で、葉脈がその中で枝分かれする。シダ植物門のものと、種子植物はこれである。小葉は、小さく単純で、葉脈は主脈のみで枝分かれはない。ヒカゲノカズラ植物門のものがこれである。トクサ植物門は当初は小葉であるとされたが、現在では大葉の一つと見られている。

茎の構造

シダ植物の茎は、ほとんどが肥大成長を行わない。維管束の配置は種子植物の真性中心柱(木部と師部のセットが同心円に並ぶ)ではなく、中心に木部、それを師部が囲むという原生中心柱かその変形、あるいはそれが同心円的になった網状中心柱という形を取る。ただ、ハナヤスリ類だけで真性中心柱が見られる。

胞子をつける胞子葉と、栄養葉の間であまり変わらないものから連続的に、 極端に2型性を持つものまである。後者では、栄養葉の上に胞子葉が乗っかっているように見えるハナワラビや、

胞子葉がそれと見てわかるイヌガンソク、シシガシラ、クサソテツなどが観察しやすい。

胞子のうの形成

胞子のうはこれらの植物の生殖器官である。基本的には柄をもつのう状の構造で、その内部に減数分裂によって胞子を形成する。この胞子のうの形成の様式に大きく二つある。
薄嚢性
単独の細胞から始まり、完成した胞子のうは単一の細胞層に包まれる。普通のシダ類はこの型。
真嚢性
数個の細胞が起源となって垂直方向に分裂して胞子のうを形成する。完成した胞子のうは複数層の細胞層に包まれている。ヒカゲノカズラ類、ミズニラ類、クラマゴケ類、マツバラン類、トクサ類、ハナヤスリ類、それにリュウビンタイ類がこの型である。

胞子の二形

シダ植物のほとんどは一種類の胞子を造り、それが発芽すれば前葉体には精子が形成され、受精が行われる。しかし、種子植物では花粉と胚のうというように前葉体に雌雄の別があり、異なった部位で異なった形の胞子が形成されている。このような配偶体の明らかな二形性は、その元となる胞子の大胞子と小胞子の二形性に基づくものである。このような胞子の二形が見られるのは、現生のシダ植物ではクラマゴケ類、ミズニラ類と水生シダ類だけである。

前葉体

一般のシダ類では前葉体は薄膜状で、ややゼニゴケを思わせる姿をしている。しかし、全く異なった姿のものもいくつかある。やや異なった形のものとして、細長いリボン状やひも状のものがあり、普通のシダ類の一部に見られる。
塊状
地中性で塊のような姿の前葉体を作るものに、ヒカゲノカズラ類、マツバラン類とハナヤスリ類がある。この型の前葉体は、菌類と共生関係をもつ。
内生型
前葉体が胞子の膜外に伸び出さずに形成されるもので、クラマゴケ類がこれである。この形は種子植物の場合にやや近い。

人とのかかわり

日本ではワラビゼンマイクサソテツなど、山菜として利用されるものがいくつかある。その一部は、商品として流通するほど、広く利用される。ジュウモンジシダナチシダなども食用とされることがある。東南アジアなどではオオタニワタリやミズワラビも使われる。

ヘゴなどの木性シダ類の幹やゼンマイ類の根塊が、洋ラン栽培など園芸用資材として利用される。

また、オオタニワタリなど、鑑賞価値の高いものは、古くから栽培されてきた。広くシダ植物の範囲では、イワヒバとマツバランが日本では古典園芸植物として、江戸時代より栽培が行われた。ただし、そのための採取により、これらはその個体数が減少し、絶滅に瀕している地域もある。

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