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ジェームズ・タレル

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より
Wikipedia画像へのリンク(『ザ・ライツ・インサイド』(The Light Inside)、ネオン管、石膏ボード、漆喰、ガラスによるサイトスペシフィックなインスタレーション。ヒューストン美術館1999年)

ジェームズ・タレル(James Turrell、1943年アメリカ合衆国ロサンゼルス生まれ)は、光そのものを作品にしている現代美術家である。知覚する人間の作用に興味を持っており、知覚に働きかけ普段意識しない光の実在を感じさせるようなインスタレーション作品や空間を多く作っている。

作品は、たとえば暗い壁に光を投射して、触れそうで重さもありそうな「光のかたまり」が壁から飛び出ているように見せたり、天井が開いた部屋で空の光の色が時々刻々と変わっていくさまを見せ、それに補色の光を加えて空の色を濃くしたり変えたり、また真っ暗闇の部屋の中に観客を入れて、暗さに慣れてきた頃に光のスクリーンが見えはじめる、といったものがある。

彼は大学で知覚心理学と数学を学び、その他物理学航空学、美術などの講義に出席した後、カリフォルニア大学アーバイン校大学院で美術史を、クレアモント大学大学院で芸術修士号を取得した。以後1960年代後半から発表を続け、世界中の美術館での個展を多数行い、日本でも1995年水戸市水戸芸術館で個展を行い、1998年には埼玉県立近代美術館世田谷美術館他で巡廻展が行われた。また飛行機の免許も持っており、高空の青い光からも作品のインスピレーションを得ている。

タレルの作品の分類

彼の作品は、 # 屋内に設置され、プロジェクターなど人工の光や、天井などからの自然光を使った作品 # 『ソフト・セル』や『ガスワークス』など、人間一人が入り、感覚を遮断したり操作したりする作品 # 光を感じることのできる場所作り(『ローデン・クレーター』)

に大別できる。彼は光と知覚をコントロールしてそれを完璧に体験するために、インスタレーション方法や展示空間にも細心の注意を払ってきた。多くの場合は、展示場所に合わせて作品を新しく制作したり形を変えたりする。また、光を発生させたり個人体験型の巨大機械を作るなどしているが、技術の使用を強く打ち出すテクノロジー・アートメディア・アートには分類できない。彼の場合、使用する機械や技術はあまり高度でなくても、知覚に対して最大の効果をあげることができるからである。

近年では、美術館に作品を恒久展示することが増えてきた。ニューヨーク市のニューヨーク近代美術館P.S.1)に1986年に作品を恒久設置したのを皮切りに、ドイツイスラエルなどの美術館に、空を見るための天井が開いた部屋などの作品が据え付けられている。また、近年では日本でも、新潟金沢香川熊本など彼の作品を常に体験できる場所が増えた。

ライフワーク、『ローデン・クレーター』

Wikipedia画像へのリンク(ローデンクレーターの衛星写真)

彼の最大の作品でライフワークとなっているのが、『ローデン・クレーター』(Roden Crater)である。このクレーター噴火口)は、アリゾナ州のフラッグスタッフのはるか郊外、標高2000mを超え空気の透明度の高い高地砂漠地帯(ペインテッド・デザート)にあり、約40万年前にできた。サンフランシスコ火山地帯に位置し、ほぼ円形で縁が高くて美しい直径約300m、高さ約200mの噴火口である。1975年ごろに見つけた後、地主らを説得して購入し、以後1979年から今まで細々と建設作業が続いている。

タレルはクレーターの縁を完全に円形にする土木作業から行い、いずれはこの天然のすりばちを、宇宙のパノラマを眺める巨大な裸眼天文台にする考えを持つ。クレーターの底から空を見るだけで、青空が縁取られドーム状に見える現象が起こるほどのクレーターに、さらに11の地下室と数百mにわたる地下トンネルを掘り、そこを太陽や月など天体の動きにあわせてトンネルからの光が差し込み、様々な光の存在を実感できるような場所になることを意図している。これが完成すれば、ランド・アートの作品としても最大規模のものとなる。

日本で見られるタレルの作品

谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』に着想を得て制作された。照明はすべて間接光である。和室"Outside in"は、可動式の屋根を持ち、開け放つと空が居室に現れる。畳に寝転びながら、空の光の色が刻々と変わり、天井の色も変わる様を見ることができる。和室ゆえに、金沢21世紀美術館のタレルの部屋とも異なる趣がある。また、浴室"Light Bath"には光ファイバーによる照明が施されており、互いの顔も判別できないほどの闇の中にありながら、水中にある身体が発光し、身体の動揺とともに水面の光が揺れる様を体験できる。蝋燭から瓦斯燈へ、瓦斯燈から電燈へと、絶えず明るさを求めていくに従い失った「陰翳」(そして光)の感性を取り戻すことができる。宿泊が可能であり、浴室を利用するには宿泊する必要がある。
  • 金沢21世紀美術館金沢市
  • *『Blue Planet Sky』2004年制作 室内1,117x1,117cm、高さ850cm、開口部560x560cm 無料で鑑賞可能。壁に沿ってベンチ状になっており、そこに座って空を見上げる。開口部の天井の色が変わり、空の色も変わる。
  • *『ガスワークス』1993年制作 CTスキャンのような寝台に寝て、ガスタンク状の丸い物体に挿入され、その中で15分間光に圧倒される作品。常設展示ではなく、展示されている場合は要予約。
  • 地中美術館香川県直島町
  • *『アフラム、ペール・ブルー』1968年制作 プロジェクターで光を投影し、まるで壁から光の塊が飛び出して浮かんでいるような作品。
  • *『オープン・フィールド』2000年制作 壁にうがたれた青い光の満たされた直方体の空洞に頭を入れてみると、中は影の一切ない遠近感のない青い空間が無限に広がっているように感じる。
  • *『オープン・スカイ』2004年制作 室内の天井全体が取り払われ、空の色の補色が白いはずの壁一面を覆うように感じる。日没時に開催されるツアー(オープン・スカイ・ナイト・プログラム。金土のみ実施、要予約)では、壁の影に埋め込まれたLEDが様々な色に変化することで、空と壁が様々な色に変わるような感覚を起こされる。
  • ベネッセアートサイト直島(香川県直島町)
  • *『南寺(みなみでら)』1999年制作
明治時代まで寺のあった場所に、安藤忠雄設計で周囲や歴史的文脈と調和した建物を新築し、内部にタレルのインスタレーション『バックサイド・オブ・ザ・ムーン』を展示。彼の『アパチャー』シリーズに属する、真っ暗の部屋に入って数分経つと目が慣れて光のスクリーンが見えてくるという、「暗闇に目が慣れる」という身体感覚を体感できる作品。南寺の場合、内部は完全な暗黒で自分の身体が視認できず自分自身が存在するという感覚を失うほどであり、しかも目が慣れるまで10〜20分かかる最長のものであるため、体験中に感じる蘇生感や身体感覚の変化は強烈なものがある。

外部リンク

インタビュー

美術館・展覧会・記事など

映画

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