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ミツバチ

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より

ミツバチ(蜜蜂)は、ハチ目(膜翅目)・ミツバチ科(Apidae)・ミツバチ属Apis)に属する昆虫の一群で、に加工して蓄え、蜂蜜とすることで知られている。世界に9が知られ、とくにセイヨウミツバチは全世界で養蜂に使われており、24の亜種が知られている。

セイヨウミツバチ成虫寿命:女王蜂1-3年(最長8年)、働き蜂 最盛期15-38日、中間期30-60日、越冬期140日、雄蜂21-32日ミツバチデータ

種類

  • セイヨウミツバチ(学名:Apis mellifera) - ヨーロッパアフリカに分布。
  • トウヨウミツバチ(学名:Apis cerana) - アジア全域に分布。
  • * ニホンミツバチApis cerana japonica Rad)はトウヨウミツバチの亜種である。
  • サバミツバチ(学名:Apis koschevnikovi) - インドネシアボルネオ島に分布。
  • キナバルヤマミツバチ(学名:Apis nuluensisi) - インドネシアのカリマンタン(ボルネオ)島に分布。
  • クロオビミツバチ(学名:Apis nigrocincta) - インドネシアのスラウェシ島に分布。
  • オオミツバチ(学名:Apis dorsata) - 東南アジアアジアに分布。
  • ヒマラヤオオミツバチ(学名:Apis laboriosa) - ヒマラヤ地域に分布。
  • コミツバチ(学名:Apis florea) - 東南アジアから西アジアに分布。
  • クロコミツバチ(学名:Apis andreniformis) - 東南アジアに分布。

概要

Wikipedia画像へのリンク(飛行中のミツバチ)

日本ではニホンミツバチ、セイヨウミツバチの2種が飼育され、養蜂に使われる。また、作物受粉にも用いられるが、蜜を出さず特殊な振動採粉をするナス科果菜類の受粉には役に立たない。そのため、トマトピーマンなどの受粉用にはミツバチではなくマルハナバチ(ミツバチ科マルハナバチ属)が使われる。

ミツバチの天敵としてアジアだけに生息するオオスズメバチがいるが、アジアで進化したトウヨウミツバチはオオスズメバチへの対抗手段を獲得した。巣の中に侵入したスズメバチを大勢のミツバチが取り囲み蜂球とよばれる塊をつくり、蜂球の中で約20分間の間に48前後のを発生させる。取り囲まれたスズメバチは上限致死温度が44〜46℃であるために耐えられずに死んでしまうが、ミツバチは上限致死温度が48〜50℃であるため死ぬことはない。布団蒸しと喩えられる。

また、スズメバチへの対抗手段を持っていないと思われているセイヨウミツバチも、大群でスズメバチの腹の周りを圧迫して呼吸を不可能にし、約1時間かけてスズメバチを窒息させるという対抗手段を持っている。これをasphyxia-balling窒息スクラム)と呼ぶSmothered ミツバチ、必殺技「窒息スクラム」で天敵スズメバチを撃退 。なお、セイヨウミツバチは上限致死温度がトウヨウミツバチよりも低いため、蜂球は作れない。

Wikipedia画像へのリンク(巣の材料を食べる害虫のスムシの一種)
他には、直接ミツバチを襲うわけではないが、養蜂家からスムシ(巣虫)と呼ばれ嫌われるハチノスツヅリガ等の幼虫は、蝋を原料とした巣を食べて成長する事から、多くのスムシに寄生された巣は全滅することもある。蜂の病虫害について

古くから使われていたニホンミツバチに比べより多くの蜜を採集するセイヨウミツバチが1877年に導入された。セイヨウミツバチは繁殖力も旺盛なことから野生化しニホンミツバチを駆逐してしまうのではないかと言われ、実際に北米では養蜂のために導入した後、野生化している。しかし、日本では天敵オオスズメバチの存在があり、オオスズメバチのいない地域で進化したセイヨウミツバチはトウヨウミツバチのように蜂球による攻撃という対抗手段を獲得していないため、現在まで一部の地域を除いて野生化は確認されていない(オオスズメバチが生息していない小笠原諸島ではセイヨウミツバチが野生化して問題になっている)。

ニホンミツバチの野生集団を人工巣に誘導して蜂蜜を取ることも行なわれている。

新たな女王蜂が誕生した巣では、5〜7月に巣分かれ(分蜂)が起こり、女王蜂は働き蜂を引き連れ巣を出て、新しい巣を探しに出る。

蜂球
:巣口周辺を飛び回るキイロスズメバチと腹部を反り上げ翅を震わせるニホンミツバチ。 
:ニホンミツバチによる蜂球。中では2匹のキイロスズメバチが蒸されている。 
:「」の約1時間後。蜂球は解体され、蒸し殺されたキイロスズメバチの遺骸が見える。
(いずれも2005年7月 横浜市内)

ミツバチのオスを指す英語「drone」は「なまけもの」を意味する。これはメスである働きバチが花粉や蜜を集めに出かけたり、巣の中を掃除したり、幼虫の世話をしたり、と非常によく働くことと対比してこのように呼んでいると考えられる。ミツバチのオスは羽化から1週間ほど経つと、女王バチ交尾するため、晴天の日を選んで外に飛び立つ。

ある一定の範囲の空中に、たくさんのオスバチが集まって飛んでいると、その群れの中へ女王バチが飛び込んできて交尾をおこなう。巣の中で死んだハチは働き蜂により、巣の外に捨てられる。

蜜の採集

ミツバチは蜜源を見つけると巣内の垂直な巣板の上でダンスを行い、仲間に蜜源の方向と距離を伝える。これは本能行動の例としてたびたび使われる。ミツバチのダンスは、蜜源の場所という具体的な情報をダンスという抽象的な情報に変換して伝達が行われるため、記号的コミュニケーションであると考えられている。ミツバチのダンスコミュニケーションを発見したカール・フォン・フリッシュは、高次なコミュニケーション能力が昆虫にもあるという発見が評価され、ニコ・ティンバーゲンコンラート・ローレンツと共に1973年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。

蜜源が近い場合には、体を振るわせながら左右に交互に円形を描く「円形ダンス」をおこなう。

蜜源が遠い場合 (50m-) は「尻を振りながら直進 - 右回りして元の位置へ - 尻を振りながら直進 - 左回りして元の位置へ」という、いわゆる「8の字ダンス(尻振りダンス)」を繰り返す。このとき尻を振りながら直進する角度が太陽と蜜源のなす角度を示しており、真上が太陽を示す。つまり、巣板上で右手水平方向に向かって尻を振るような8の字を描いた場合、「太陽を左90°に見ながら飛べ」という合図になる。また、ダンスの時の尻を振る速度が蜜源までの距離を表す。すなわち、尻振りの速度が大きいときは蜜源までの距離が近く、速度が低いときには距離が遠い。花粉や水の採集、分蜂時の新たな巣の場所決定に際しても、同様のダンスによるコミュニケーションが行われる。

蜜を持ち帰った働きバチは貯蔵係のハチに蜜を渡すが、そのとき貯蔵係は糖度の高い蜜を優先して受け取り、糖度の低い蜜を持ったハチは待たされる。このことによってよりよい蜜源へ働きバチを集中的に動員できる。

日本の坂上昭一のグループによるミツバチの巣の社会性行動研究は世界的に著名。

蜂の巣の構造

Wikipedia画像へのリンク(蜂の巣(巣板))

自然の状態では、ミツバチの巣は巣板と呼ばれる鉛直方向に伸びる平面状の構造のみからなる。ミツバチが利用した空間の形状によっては巣板が傾いていることもある。巣板の数はミツバチの種によって異なる。養蜂に用いるニホンミツバチやセイヨウミツバチは複数枚の巣板を形成し、自然の状態でも10枚以上にのぼることがある。コミツバチなどは巣板を一枚しか作らないため、養蜂には向かない。

ミツバチは巣板を防御する構造物を自ら作り出すことはせず、家屋の隙間や床下、木のウロなどもともと存在する外壁を利用する。都市部では巣板がむき出しになった巣も存在する。

巣板は中空の六角柱が平面状に数千個接続した構造である。このような構造をハニカム構造(honeycomb、蜂の巣の意)と呼ぶ。強度に優れ、材料が最少で済むという特徴がある。六角柱は厚さ約0.1mmの壁でできており、奥行きは10〜15mmある。底部は三角錐である。巣板の材料はミツバチの腹部にある蝋腺から分泌された蜜蝋である。幼虫を育てるために使用する穴の奥行きは10〜15mmであるが、蜜を貯蔵するために使用する穴の奥行きはバラツキが大きく20mm程度に成る場合もある。

蜜蝋自体は食品とはならないが、ワックス油絵具などのメディウム(薄め液)、石鹸クリーム口紅蝋燭などの原料として利用される。

ローヤルゼリー

ゲノム解析により、女王蜂と働き蜂のゲノムに違いがないことが明らかになった。どのメスの幼虫も女王蜂になる素質を持っているが、ローヤルゼリー(ロイヤルゼリー)と呼ばれる働き蜂の咽頭腺からの分泌物を与えられたメスの幼虫だけが女王蜂として成長する。

性決定の仕組み

受精卵からはメス(女王蜂または働き蜂)が生まれるが、卵が受精せずに発生した場合はオスとして生まれる。オスはメスの半分の染色体数を持ち、それはすべて母親(女王蜂)に由来する。このため、オスは母親の持つ遺伝情報の半分(ゲノムに相当)を受け継ぎ、メスは母親の持つ遺伝情報の半分と半数体の父親の遺伝情報すべてを受け継ぐことになる。

雑学

  • 日本で現在使用されている20切手のデザインのモデルにもなっている。
  • 小説『みつばちマーヤの冒険』(蜜蜂マアヤ)(ボンゼルス著。アニメ化もされた)は、擬人化したお話ではあるが、スズメバチがミツバチを襲うなど、実際の観察に基づいた設定がなされている。
  • シャーロック・ホームズシリーズでは、ホームズは探偵引退後の仕事として養蜂家となり、著作も物したことになっている。これは、この50年ほど前に近代養蜂に関する体系的な著書がアメリカ人ラングストロス(Lorenzo Lorraine Langstroth)により発表されたことが反映されている。

脚注

関連項目

外部リンク

ミツバチの関連ワード
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