読み込み中...モンスターペアレント(Monster parent、略してモンペ)とは学校に対して自己中心的で理不尽な要求を繰り返す保護者を意味する和製英語で、向山洋一の命名とされる「教室ツーウェイ」2007年8月号9ページ参照。
なお、単に要求を繰り返すだけではモンスターペアレントとは呼ばれず、当の要求が常識の範囲内にあり、かつしかるべき理由を明示してくる場合はここには含まれない。
基本的には直接教員にクレームをおこなうものが多いが、校長や教育委員会など、より権限の強い部署にクレームを持ち込んで、間接的に現場の教員や学校に圧力をかけるという形式も増えている。
2008年には同名のテレビドラマが制作されるなど話題となった。
なお、アメリカではヘリコプターペアレント(Helicopter parent)という用語があるが、子供の就職の面接についてくるような過保護の親を指す用語であり、日本のような苦情および訴訟そのものを意識しての用語ではない。また、アメリカでは最終的には訴訟でけりがつくこと、学校も含めてどのような組織にも顧問弁護士が存在することなどから、法的根拠のある要求でなければいくら校長にクレームを出しても埒があかない。そもそも、訴訟社会であるため、単に訴訟を起こすからといって問題視されるわけではない。
また、最近は自分の子供に対しても自己中心的な要求を繰り返す親が増えている。これも、いわゆる「モンスター・ペアレント」と同様、教育費の負担などから子供に対して消費者意識・権利意識が高まっていることが原因と思われる。
さらにはモンスターペアレントの子供がモンスターチルドレン“親”だけじゃない「モンスターチルドレン」の実態やモンスター大学生J-CASTニュースとなるなど新たな問題を起こしている。
「モンスターペアレント」という語が登場する以前から、こうした問題を「親のイチャモン」として研究してきた大阪大学大学院教授である小野田正利によると、こうした保護者が目立って増え始めたのは1990年代後半からであるとされる(アメリカにおける「ヘリコプター・ペアレント」問題の発見は1991年である)。
門脇厚司の指摘によると、この時期に子供が学齢期を迎えた多くの親(概ね1965年前後の生まれ)は、1970年代終盤から1980年代序盤の校内暴力時代に遭遇したので、元来教師への敬意を持っておらず、更に教職の人気が低かったバブル景気の時期に社会に出た為に、教師を愚弄している。又、バブル崩壊後のリストラなどで社会的な地位を失った人々の、教師に対する嫉みもあるという。更に、校内暴力に遭遇した世代の親の多くは焼け跡世代であり、敗戦後の窮乏期に「ギブ・ミー・チョコレート」をして生き延びたり、戦災孤児となって見捨てられたりする者も多かった。更に、「言ったもん勝ち」がまかり通る風潮が強まっている点も、モンスターペアレント出現の原因の一つではないかと小野田は指摘している「小野田正利」。
一方、喜入克は、こうした保護者の増加の原因を、「保護者の消費者意識の暴走」との見解を述べている。喜入によれば、保護者は自分の子供が学校で他の子供より「損」な待遇を受けることが我慢できないのであり、それは「同じ値段を払えば同じ商品が手に入る」という意識で教育サービスを捉えているからであるとされる。例えばある学年の学級担任が新卒、中堅、評判の良いベテランというような構成になったとする。モンスターペアレントは、自分の子供が「評判の良いベテラン教師」以外に担任されることを不当待遇であると考える。なお保護者の過剰な消費者意識を問題視する意見は河上亮一からも提出されている【やばいぞ日本】「お前ら全員辞めさせる」。
また喜入は、これらモンスターペアレントやその子供に学校が手こずる理由として、彼らが「学校と対等な消費者」としての立場と「まだ半人前である子供」としての立場を使い分けるという現象も指摘している。すなわちモンスターペアレントやその子供たちは、学校に対してクレームをつける際には「消費者」として振るまい、そうしたクレームが学校に「ルール違反」と認定されて退学や停学などの処分を出されそうになると、「半人前である子供への情状酌量」を要求するのである。
こうした保護者については、門脇によっても世代の問題が指摘されているが、山下・岡田らは小学校2年生の保護者を対象としたアンケート調査のクラスター分析をもとにターゲット・プロファイリングを行うことで、「既に子育てを経験している、経済的な余裕は無いが教育ママ度はそれなりに高い、パート勤務の母親」(山下・岡田らは「生活切迫型パートママ」と命名している)が、学校への信頼度の低さを示す6つの指標においていずれも突出した数値を示すことを明らかにしている山下・岡田「学校教育に対する保護者意識の実態。
その他、地域の人間関係が希薄になった結果、かつては地域社会が緩衝材となっていた個々の親の不満が直接学校に持ち込まれるようになった状況も背景にあるのではないかという意見も多い「小野田正利」。
なお、こうした保護者は初等教育や中等教育に限られた問題ではなく、星野・横山・横山・水野・徳田らは幼稚園の保護者においても、自己中心的な保護者(特定の園児は自分の子供と遊ばせるな、クラス分けで特定の園児と同じクラスにするよう要求、テレビや本で紹介された教育方法を導入するよう要求する、時間かまわず保育者の自宅に毎日電話をかける等)が問題化していることをアンケート調査によって示している。この調査によると、保育者の4人に1人が問題のある保護者としてこうした保護者を挙げている星野ハナ、横山範子、横山さやか、水野智美 、徳田 克己「幼稚園教諭の感じる「困る保護者」とその対応」日本保育学会大会発表論文抄録No.53。
一方、アメリカにおけるヘリコプターペアレントは、主に高等教育における保護者の過干渉・過保護を念頭に置いた用語でありSome、主に初等・中等教育の問題として論じられている日本におけるモンスターペアレントとは、言説の様相が若干異なっている点に注意を要する。
こうした保護者が一人でも出現すると、教職員はその対応に膨大な時間を奪われてしまう。その結果、他の児童・生徒のために使う(教材研究、授業準備、生徒指導、部活指導、補習などの)時間がなくなり、場合によっては学校全体に悪影響が広まる。
2006年に金子元久が1万校の小中学校の校長を対象にして行ったアンケート調査によると、中学校では29.8%の校長が「保護者の利己的な要求」が深刻な教育の障害になっていると答えており、「やや深刻」と答えた48.9%と合わせると78.7%の校長が保護者の利己的な行動を問題視しているという結果が出た。なお小学校では「深刻」が25.7%、「やや深刻」が52.1%で合計は77.8%となっている。「第5回基礎学力シンポジウム報告「学力問題と学校」(金子元久)」適切な対応がなされればその影響は最小限にとどまるが、対応が一人の担任教職員に押しつけられた場合などでは逆に被害が拡大したり、担当教職員自身が体や精神を病んでしまう事例も珍しくない。特に、経験が浅い新任教師は適切な対応ができず問題を抱え込んでしまうと言われている(喜入、2007)。2006年には西東京市の市立小学校に着任した女性教員が、一部の保護者から深夜に携帯電話に苦情電話をかけられる、連絡帳で人格攻撃されるなどした結果、自殺している新任女性教員の自殺、遺族が公務災害申請へ。
また、2008年1月にうつ病として労災が認定された例として、子供同士のケンカで軽いけがをした子供の両親が、当時子供を預けていた埼玉県狭山市立保育所の女性所長に対して4ヶ月に渡り苦情を言い続け、最終的に保育所の対応を批判する内容証明郵便を送りつけ、女性所長がこれらを苦に焼身自殺したというものがある。埼玉の保育所長の自殺、公務災害に認定 - 中日新聞 2008年1月10日付。
教育評論家尾木直樹法政大学教授によると5つのタイプがあるとされている。
# 学校依存型(子供を朝起こせ、学校で汚れたので洗濯してくれなど「何でも学校に押しつける」) # 自己中心型(劇の主役や習字の評価を高くしろなど「学校行事の日程変更なども要求」) # ノーモラル型(夜中、授業時間でも電話してくる) # 権利主張型(風邪で休んだので給食費返還、住民税支払っているので給食費未納) # ネグレクト(育児放棄、虐待)型(食事なし、服や髪の汚れ)モンスターペアレントについての対策は、様々な論者によって提言が行われている。小野田正利は、モンスターペアレントのイチャモンを額面通りに受け取るのではなく、その要求によってモンスターペアレントが実際には何を求めているのかを察知し、可能な解決策を探るという手法を提言している。また喜入克はこうしたモンスターペアレントの対応は個々の教職員や学校では不可能であるとし、教育委員会内にモンスターペアレント対応専門のチームを設置することを提案している。
教育再生会議は喜入の考え方に近く、2007年6月1日に決定した第2次報告の中で「学校問題解決支援チーム(仮称)の設置」を提言している。また学校協議会等地域社会と学校との連携を図る試みも行われている。教職員が個人で訴訟費用保険(教職員賠償責任保険)に入るケースも増加しており、2007年には東京都の公立校の教職員の3分の1がこうした保険に入っていると報道された。2007年7月12日付の毎日新聞記事によれば、都教員の訴訟費用保険加入数は2000年から2007年の間に1,300人から21,800人へと激増したとされる。この保険は、教職員の不法行為による被害者への個人賠償責任保険に加えて、不法行為の有無に関わらず訴訟を起こされた際の訴訟費用も負担する東京海上日動「教職員賠償責任保険」保険規約を参照のこと。。文部科学省は2007年7月、全国の教育委員会から具体的なモンスターペアレント対策施策案を募り、それらの中から10の自治体を選んで2008年度に実施させて、その費用の8割を国の予算から補助するという計画を発表した「読売新聞「理不尽な親、疲弊する先生」。
経営コンサルタントの本間正人は「モンスターペアレントやモンスターペイシェントとは、普通の人間がモンスター化している状態であり、彼らも常にモンスターというわけではない」「モンスター化した人の被害を受けた人も、いつか自身がモンスター化しないとも限らない」との立場に立ち、企業内における人材育成の方法論を応用して、こうしたモンスター化した保護者への対応マニュアル(「一対一では対応しない」「かならず詳細な記録を取り、可能な限りやりとりを録音する」「相づちを打つ際には、決して相手の言うことに同意していると思われるような言葉を使わない」など)を作成している本間正人『モンスター・ペアレント―ムチャをねじ込む親たち』中経出版、2007年。
また、学校リスクマネジメント推進機構が発行している「教職員のための保護者クレーム対応マニュアル」では、クレーム対応の「基本的な考え方」「解決までのプロセス」「クレームを未然に防ぐために」「正当な指摘、批判への対処」という内容と共に、ケース別の対処法(25ケース)や「苦情受付票(担任用)」「苦情フォローアップ票(管理職用)」といった、学校現場で活用できる雛形などが紹介されている。このマニュアルは、東京都大田区教育委員会が、区内88の小・中学校全てに導入したのを皮切りに、その他の教育委員会や私立学校でも導入が進んでいる。東京私立中学高等学校協会、東京私学教育研究所が開催した理事長・校長研修会でもこのマニュアルが採用されている。発行責任者である学校リスクマネジメント推進機構の宮下賢路氏は、悪用防止の観点から学校関係者以外への販売は控えていると話す。同機構では、私立学校や、教育委員会からの依頼により保護者の満足度向上を目指した研修会を各地で行っている。管理者研修では、クレームをリスクとして捉え継続的にコントロールをする方法が示され、また、実務者研修では、クレーム対応の基本スタンスや詳細なコミュニケーションの方法等が指導されている。さらに会員校には、手厚い個別支援や体制構築コンサルティング等が実施されている学校リスクマネジメント推進機構「教職員のための保護者クレーム対応マニュアル」2008年5月。
また大阪市は保護者の苦情対応マニュアルを2008年度に制作したが、この中では「モンスター」との呼称は関係構築を阻害するとの問題提起を行っている学校苦情対応マニュアルを作成。