読み込み中...言語学(げんごがく)は、人類が使用する言語(ことば)の本質や構造を科学的に記述する学問である。
英語 linguistics(言語学)の語源は linguistique(フランス語)、さらにさかのぼるとlingua(ラテン語、「舌、言葉」の意)であり、linguisticsという語は1850年代から使われ始めたMcArthur, Tom (1996), The Concise Oxford Companion to the English Language, Oxford University Press (ISBN 0198631367)。
現代言語学の目的は、ヒトの言語(ことば)を客観的に記述することである。記述的とは、現に存在する言語の持つ法則や性質を言語データの観察を通して記述するということである。物理学者がリンゴがなぜそのように落下するのかを考えるように、言語学者は言語がなぜそのように話されるのかを考える。
また、現代言語学は言語の優劣には言及しない。むしろ、言語学においては、あらゆる言語に優劣が存在しないことが前提となっている。ゆえに、世界の言語はすべて同等に扱われる。かつては言語の史的変化を言語の進化と捉え、社会・文明の成熟度と言語体系の複雑さを相関させるような視点が一部存在したが、その後、いかなる言語も一定程度の複雑さを有していることが明らかとなり、このような見解は現在は否定されている。すなわち、幼稚な言語、高度な言語は存在せず、すべての言語はそれぞれの言語社会に密接に関連しながらそれぞれのコミュニティに適応して用いられているというのが現在の言語学の見解である。
言語学ではヒトが話す言語(ことば)を取り扱う。そこで、「ヒトが話す言語」とは何かを明確にする必要があるが、学者らによる「言語」の定義は未だに決着していない。
以下に主要と思われる言語の特徴を記す。
これとはほぼ反対の立場として音象徴(sound symbolism)という見解がある。これは、音素そのものに何らかの意味や感覚、印象といったものがあり、言語記号はその組み合わせによって合理的に作られているとするものである。しかし、実際にはどの言語にも普遍的な音象徴というものは存在しないため、現在そのような立場の言語研究はあまり行われていない。
アンドレ・マルティネは言語が単なる音声の羅列ではなく、二重構造を有していることを指摘した。すなわち、文を最小単位に分割しようとした場合、まずは意味を持つ最小単位である形態素(morphèmes)のレベルに分割される。そして、形態素はさらに音素(phonèmes)に分割される。例えば、日本語の 語は語としてはこれ以上分解できないが、音素としては[a' target='_blank'>http://wiki.freeml.com/%C3%B1%B8%EC/'>語は語としてはこれ以上分解できないが、音素としては[a、[m]、[e] の三つに分解される。言語の持つこのような二重構造は二重分節(double articulation)と呼ばれる。動物の発する声にはこうした性質が見られないため、二重分節はヒトの言語を特徴づける性質とされる。
ヒトの言語は過去に起こった事実や未来のことを表現することも可能である。文字の体系を持っていれば、文字に書き留めることによって、後世に伝えることも可能になる。しかし、動物の場合、餌のありかや敵の急襲を知らせるなど現在のことしか伝達できない。
ヒトの言語の場合、あらゆる情報を伝える手段を持っている。例えば、初めて会った人からまだ行ったことのない外国の話を聞かされても理解することができる。しかし、動物の言語の場合、空腹感や幸福感など決まりきったことしか伝えられない。言葉を無限に創造できるのはヒトの言語における最大の特徴である。
言語の規則には、例えば「前から3番目の語」というような表層の順序に言及するようなものは存在しない。むしろ表層にあらわれない範疇、階層、構成素などの構造に言及する。これを構造依存性という。ノーム・チョムスキーは生成能力(generative capacity)という用語を用いて、「文法は、文を弱生成(weakly generate)し、構造記述を強生成(strongly generate)する」と述べた。これは弱生成能力すらもたない理論は妥当でないことを示すために述べられたものだが、自然言語の本質は構造記述にあることを述べたものでもある。
音声学が発音時の筋肉の動きや音声の音響学的特性など物理的な対象を研究するのに対して、音韻論ではその言語で可能な音節の範囲(音素配列論)など言語が音声を利用するしくみを研究する。
音声学は、その研究方法、内容などから言語学の本来の研究分野には含まれないとする考えと、基礎研究に据えて言語学研究のプロとアマを分けるのが音声学の知識の有無とする考えがある。全ての言語(手話等を除く)は音声に基き、音声学の知見が音声以外の研究の幅を左右するとも考えられている。
語の成り立ちは形態論で研究し、語が他の語と結合して作る構造は統語論で研究する。統語論が研究対象とするのは文までで、それ以上のテクストや会話といったものは談話分析で扱う。
伝統的に意味論のかかわる「意味」とは話者や文脈・状況を捨象した普遍的な語の意味や文の意味(真理条件)に限られてきた。話者の意図は意味論の研究対象ではないと見る場合、これの研究は語用論で行う。西洋における言語研究の始まりは紀元前に遡り、ギリシアの哲学者たち(プラトン、エピクロスなど)の間で起こった言語起源論(:en:Origin_of_language)や修辞学であった。古典ギリシア語の文法書は、紀元前1世紀までに完成し、ラテン語のほか後の西洋の言語の文法学(伝統文法、学校文法)に大きな影響を与えた。
言語学が大きく飛躍する節目となったのは、1786年のことである。イングランドの法学者のウィリアム・ジョーンズは、インドのカルカッタに在任中に独学していたサンスクリット語の文法が、以前に学んだギリシア語、ラテン語などの文法と類似していることに気づき、「これらは共通の祖語から分化したと考えられる」とアジア協会 (Asiatic) で見解を示した。これが契機となり、ヤーコプ・グリム ら「青年文法家」による歴史的比較言語学がドイツのライプツィヒで興り(19世紀)インド・ヨーロッパ語族の概念が確立した(印欧語学)。
20世紀に入ると言語学は大きな変動期を迎えることになる。20世紀初頭にスイスの言語学者、フェルディナン・ド・ソシュールの学説に影響を受けた構造言語学が興り通時的な(書き言葉の)研究から共時的な(話し言葉の)研究へと論点が変わっていく。
アメリカの言語学は、人類学者のフランツ・ボアズ のアメリカ州の先住民族の言語研究やエドワード・サピア がさきがけとなった。構造言語学の枠組みは、レナード・ブルームフィールドによって確立する。
1957年、ノーム・チョムスキー は変形生成文法を提唱し、学界を風靡し、言語学に革変をもたらした。
また、マイケル・ハリデー(:en:Michael Halliday)らの機能言語学(:en:Systemic functional grammar)や、ジョージ・レイコフらの認知言語学など異なったアプローチも考案された。