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古楽器

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より
Wikipedia画像へのリンク(古楽器の演奏、アシジの下教会の礼拝堂にあるシモーネ・マルティーニのフレスコ画)

古楽器(こがっき)とは、西洋音楽(クラシック音楽)において、楽曲が作曲された当時の様式をもった楽器のことを指す。英語では、early instruments(昔の楽器)、original instruments (オリジナル楽器)もしくは period instruments (当時の楽器)、 aurthentic instruments ([歴史考証から]正統的な楽器)というように、ニュアンスに応じていくつかの使い分けがされているものの、全て古楽器のことを指す。これに対して、20世紀ごろから標準的に用いられている様式の楽器を「モダン楽器」などと呼ぶことがある。なお、モダン楽器に比べて機能が低いために、モダン楽器に比べると演奏に制約が多い傾向にある

概要

年代的には、中世ルネサンス期バロック期ヨーロッパの音楽で用いられていた様式に基づく楽器を主にいう。しかし、古楽器の定義の仕方としては、20世紀初頭に大量生産方式が開始される以前に、専門の職人(個人や職人集団)によって手作りされた時期の楽器と定義することもできる。これによると、例えば上記の年代から外れるピアノの場合でも、18世紀後半から19世紀初頭に造られたフォルテピアノや、その後20世紀初頭にモダン・ピアノの規格が世界的に統一されるまでの過程で造られた、さまざまなタイプのピアノを、すべて古楽器として扱うことになる。

中世以降の東西の文化交渉の結果、民族楽器民俗音楽の楽器)と明らかに関連性のある楽器がいくつか見られ、とりわけ中世の世俗音楽の楽器に中央アジアアラビア半島起源のものが多い。中にはビウエラのようにその後に西洋の民族楽器として定着したものもある。ただし古楽器という概念は、あくまでクラシック音楽でのカテゴリーであって、民族音楽における伝統楽器と(たとえ重複するものがあるにせよ)同義ではない。

古い時代に製造され、当時そのままの姿で、主に博物館や古い城館、個人の蒐集家のもとに保存・伝承された楽器(オリジナル楽器)もあるが、実演奏においては、それらの楽器の構造や形状・製法・材料を、現物や音楽文献の裏づけによって忠実に再現したレプリカを用いるのが通常である。また、ヴァイオリン属の楽器やヴィオローネなどでは19世紀以降に改造された楽器を、元のかたちや状態に復元して使うこともある。このような楽器も古楽器と呼ぶ。ただし、20世紀前半に、推測や史料考証の誤りから造られたモダン・チェンバロや、弦楽器の「バッハ弓」は、古楽器およびその部品の複製とは認められない。

古楽器の研究・復元は19世紀末ころから始まり、特に1970年代ころから古楽器を用いた演奏とともに盛んとなった。古楽器を用いた演奏を中心に活動している音楽家を特に古楽派などと呼ぶが、古楽器の普及とともに、古楽器の使用範囲は拡大している。パイプオルガン演奏では、いちいち断らないことが多いものの、19世紀以降のシンフォニック・オルガンを用いずに、18世紀以前の教会オルガンを用いてバロック以前の鍵盤楽曲を演奏・録音する傾向が増えつつあり、これも古楽器演奏の一環と見做してよい。

主な古楽器

古楽器演奏

バロック音楽以前や、時に古典派音楽までの音楽を、古楽器と時代考証に基づく当時の奏法を用いて演奏する音楽を、狭義の古楽ということがある。

古楽器の調律

古楽器による演奏では、ピッチは作曲当時の時代・地域に近い、現代のa'=440Hzという基準とは異なったピッチが用いられることが多い。また音律には古典調律が用いられる。

古楽器で用いられる主なピッチ
カンマートーン (Kammerton): 室内楽ピッチ。 a'=415Hz 。現代一般に用いられる 440Hzから半音低い。俗に「バロックピッチ」などといい、現在のドイツ・バロック音楽演奏で最も一般的に用いられる。
ティーフカンマートーン (Tiefkammerton): a'=392Hz。440Hzから全音低い。フレンチ・バロックやその影響を受けたと思われるドイツの室内楽作品の演奏によく用いられ、「フレンチ・ピッチ」「ヴェルサイユ・ピッチ」などと呼ぶ。
コーアトーン (Chorton): a'=460Hz。440Hzから半音高く、イタリア・バロックや北ドイツのオルガン音楽、ドイツ系教会音楽の一部に用いられる。「ヴェネツィアン・ピッチ」。
古典派ピッチ: a'=430Hz 古典派期の音楽の演奏に用いられることがある。

ただし、ここで記したピッチの数値は現代の古楽器演奏で用いられる例である。一口にカンマートーンなどと言っても、当時は地域によって、より複雑なピッチが存在した。古典派ピッチを除いては、現代のピッチに対して便宜上半音単位でずらして用いられる。

文献

  • ニコラウス・アーノンクール『古楽とは何か 言語としての音楽』音楽之友社、1997年7月、ISBN 4276203708
  • 金澤正剛『古楽のすすめ』音楽之友社、1998年8月、ISBN 4276370809
  • 古楽器研究会(編)『チェンバロをさぐる』東京コレギウム、2000年5月、ISBN 4924541001
  • 佐々木節夫『古楽の旗手たち オリジナル楽器演奏のめざすもの』音楽之友社、2000年1月、ISBN 4276201845
  • 鈴木秀美『『古楽器』よ、さらば!』音楽之友社、2000年12月、ISBN 4276211875
  • 寺西肇『古楽は私たちに何を聴かせるのか』東京書籍、2000年9月、ISBN 4487796121
  • 東川清一『古楽の音律』春秋社、2001年6月、ISBN 4393930142
  • 那須田務『音楽ってすばらしい 古楽演奏による音楽の魅力の発見』ポプラ社、1995年4月、ISBN 4591047806
  • 200CD古楽への招待編纂委員会(編)『古楽への招待 200CD クラシック音楽の探究』立風書房、ISBN 4651820298
  • 野村滿男『Mozartファミリーのクラヴィーア考 チェンバロからピアノへ アクションと奏法・調律法・イコノロジー』東京コレギウム、2002年4月、ISBN 4924541559
  • ハリー・ハスケル『古楽の復活 音楽の「真実の姿」を求めて』東京書籍、1992年10月、ISBN 4487753171
  • 谷戸基岩『古楽CD100ガイド グレゴリオ聖歌からバロックまで』国書刊行会、1996年6月、ISBN 4336038392

関連項目

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