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昆虫類

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より

昆虫類(こんちゅうるい)または昆虫(英:Insect)は、節足動物門汎甲殻類(下門)・六脚亜門 (Hexapoda)・昆虫綱 (Insecta) の総称。広義には六脚亜門全体をいうが、この意味では六脚類六脚虫ともいう。

概説

昆虫類は硬い外骨格をもった節足動物の中でも、特に陸上で進化したグループで、ほとんどの陸上で生活し、淡水中に生活するものは若干あるものの、中で生活する種は例外的である。水中で生活する昆虫は水生昆虫(水棲昆虫)とよばれる。

世界の様々な気候環境に適応しており、種多様性が非常に高い。現時点で昆虫綱全体で80万種以上が知られている。現在知られている生物種に限れば半分以上は昆虫である線虫のようにまだまだ研究が進んでいないものの推測で昆虫より多いだろうと言われている分類群もある。また、細菌古細菌での種の概念は真核生物とは違うので一概に比較はできない。これらの分類群では培養すらできず、分類不可能な物が99%以上を占めるとされている(昆虫と違い培養できなければ遺伝子配列すらわからない)。仮に細菌に動物の種の定義を当てはめようとしてもそれは不可能であり、(実際にはありえないことだが)逆に細菌の種の定義(DNA-DNAハイブリや、SSU-rRNAによる定義)を動物にそのまま適応すると、目レベルの分類群ですら全て同一の種に属すとの判断が下されうる。その意味では昆虫が全生物でもっとも多様性の高い分類群とはかぎらない(可能性は低い)。2008年現在の科学で「分類できる範囲においては」最も種数が多いことは事実である。。未記載種を含めると100万種を越えるといわれている。

なお種類数の多いグループとしては、以下のようなものがある。

ムシ

現代語においては、一般には昆虫類は単に「」(むし)と呼ばれることが多いが、ダンゴムシフナムシなどの用法でわかるとおり、ムシとは本来は動きのある生物全般を意味する。漢字の「虫」(キ、)は本来、毒蛇マムシ)を型取った象形文字であるが、など爬虫類の一部や、両生類環形動物など、果ては架空の動物であるまでを含めた広い範囲の生物群を指す「蟲」(チュウ、)の略字として古代から使われている。

特徴

昆虫類の特徴を以下にあげる。寄生性昆虫などにはこの例が全く当てはまらないものもいる。

形態

成虫の体は、頭部胸部腹部の3つに分かれていて、胸部にのみ、が生えている。節足動物の体は、体節と呼ばれる節(ふし)の繰り返し構造でできているが、体節がいくつかずつセットになり、機能的、構造的にまとまった部分に分かれる。昆虫類以外の節足動物では、明確な部域に分かれないグループや、2つの部位(頭胸部と腹部)に分かれるものなどがある。

基本的に、足が6本ある。

ほとんどの昆虫が2対のをもって空を飛ぶことができる。空を飛んだ最初の動物は、昆虫だとされている。昆虫の翅の構造は、グループによって様々に特化し、彼らの生活の幅の広がりに対応している。

呼吸器官として気管気門がある。

生態

多くは卵生だが、フタバカゲロウのような卵胎生、アブラムシやツェツェバエのような胎生昆虫もいる。

生育過程で、幼虫成虫に変化する変態を行う。変態の形式により、幼虫がになってから成虫になる、完全変態をするグループと、幼虫が直接成虫に変わる不完全変態を行うグループ、そして形態がほとんど変化しない無変態を行うグループがある。成虫になるときに翅が発達するが、シミ目など翅の全くない種類も少なからずいる。

多くの昆虫は3以上の環境でないと、成長が行われず、冬眠状態となる。また、成虫の場合、一般に-3℃以下、または45℃以上の環境にさらされ続けると死滅する。しかし南極でも昆虫が生息している例がある。虫卵の状態では若干範囲が広くなると考えられる。

紫外線視覚を持つ。解剖学的に昆虫の目には紫外線を感知する細胞がある。このため、たとえば、モンシロチョウなど人の目にはオスとメスの区別がほとんどできない昆虫でも、紫外線の反射率がオスとメスで大きな差があることから、モンシロチョウ自身には両者の視覚上の差は明瞭にみえている。

進化

地球歴史上、陸上に初めて登場した動物が昆虫類を含む触角類であり、脊椎動物門両生類よりも早い時期であったと考えられている。地上に進出した触角類の一部は昆虫類となった。恐竜の繁栄より前、3億から2億年前には現在のゴキブリアリトンボなどの祖先種が登場しており、陸上で大繁栄した。生活様式、形態は非常にバラエティに富んでおり、様々なニッチに適応している。昆虫類は陸上で最も成功した動物であり、恐竜の時代、恐竜絶滅後の第三紀、そして第四紀の現在まで繁栄は続いている。

最近の話題では、2002年ナナフシに似た外観をもつ昆虫カカトアルキが新目新科新属新種として記載され、マントファスマ目という新しいグループがつくられた。

人間とのかかわり

生物世界でもっとも種類の多い動物群であり、何等かのかかわりなしに暮すことが不可能なほどに、あらゆる局面でかかわりを生じる。直接に人間の役にたつものを益虫、害をなすものを害虫と言う(ただし益虫・害虫には昆虫以外の小動物も含まれる)。昆虫採集飼育趣味の一分野として有名である。

有益な面

ペットとしての昆虫

クワガタムシカブトムシなどの甲虫類は、鑑賞価値があり、飼育するファンが多く、10万人単位の愛好者がいるといわれる。

日本国では伝統的にスズムシコオロギが鳴き声を鑑賞するなどの目的で飼育される。中国の北京などではコオロギの格闘を楽しむ風習があり、そのために飼育する。

特別な乾燥耐性を持つネムリユスリカは、教材として乾燥状態で販売される予定である。

食材としての昆虫

今日の日本においては、昆虫食はあまり一般的ではなく、どちらかと言うと下手物料理珍味として扱われる機会が多い。その中でイナゴ佃煮)は全国的に食べられていると言ってもよく、ハチセミゲンゴロウトビケラカワゲラざざむしの佃煮)、カイコガカミキリムシ等も食用とされることがある。信州のハチの子の佃煮のように郷土料理や名物になっている地域もある。

世界的にはタガメアリ、甲虫などの昆虫の幼虫を食べる文化を持っているや地域、民族は多い。特に気象条件や地理的な問題で他の食材が手に入りにくい土地の場合、貴重な栄養源となっていることは当然である。

栄養価の面からみると、一般的に昆虫はタンパク質ミネラルを豊富に含むため、人口増加砂漠化により、将来的に世界規模の食料危機が起こった場合に、繁殖が早い昆虫は重要な食料となるとの見方もある。中国では、セミなどの昆虫およびサソリ等の食用飼育業者がある。

薬材としての昆虫

中国の生薬を集めた『本草綱目』には、多種の昆虫が記載されている。一例としてシナゴキブリは、シャチュウ(しゃ虫)の名で、血行改善作用があるとされている。学問的に薬効は必ずしも明らかになっていない例が多いが、他にも薬酒の原料としてスズメバチアリゴミムシダマシ冬虫夏草(実体は真菌)などが使われたり、粉末にして外用薬にされる昆虫もある。

農薬としての昆虫

日本の法律(農薬取締法)は、農作物を害する昆虫、ダニ細菌などの防除に使われる薬剤のみならず、防除に有益な天敵をも一括して農薬と整理した。このため、農薬として登録されている昆虫、クモダニ細菌ウイルスなどがある。生物農薬とも呼ぶ。農薬のため、用法、用量、販売にも規制がある。現在日本で登録されている天敵昆虫には、オンシツツヤコバチヨコスジツヤコバチタイリクヒメハナカメムシヤマトクサカゲロウナミテントウコレマンアブラバチなどがある。

産業用の昆虫

歴史的にもっとも広範に利用されている産業用昆虫として、糸を生産するためのカイコガがある。柞蚕糸が取れるサクサンも同様に飼育されている。またミツバチ類は、蜂蜜ロイヤルゼリーの採取目的で飼育されている。カイコとミツバチは昆虫でありながら家畜になっているといえる。

農業用としては、天敵農薬以外に、果樹野菜受粉を助けるマルハナバチ類やミツバチが使用されている。

この他、海外では染料原料としてのカイガラムシ類も重要。また、釣り餌として累代飼育されているハエ爬虫類の餌として飼育販売されているコオロギなどもある。

装飾用の昆虫

タマムシチョウなど、色彩や光沢の鮮やかな昆虫は、工芸品などの装飾材料にも利用される。

モデル生物として

小型で扱いやすいものは、モデル生物として重要である。ショウジョウバエなどが遺伝学で、アズキゾウムシなどが個体群生態学で演じた役割は非常に大きい。

法医昆虫学

クロバエなどが死体にたかる特性を利用して、アメリカ合衆国などでは、遺体の放置時間を推定することが行われている。

有害な面

分類

位置づけ

昆虫を含む六脚類は、甲殻類に近縁で、合わせて汎甲殻類と呼ぶ。甲殻類は側系統だが、六脚類を含め汎甲殻類とすると単系統になる。

六脚亜門の分類

昆虫綱以外の六脚類は、顎が体の中にあるなど共通の性質を持つため、内顎類と総称される。内顎類の単系統性には異論もあるが、分子系統学的解析からは単系統性が支持されている。

昆虫綱の大分類

昆虫綱の中では、比較的原始的な、羽のない無翅類と、羽を腹側へ畳めない旧翅類がまず分けられる。しかし、無翅類は原始形質でまとめられた側系統だという説が1960年代ごろから有力となり、それを反映した次のような分類が普及しつつある。ただし、有翅「下綱」などの修正された階級はまだ一般的ではない。

  • 昆虫綱
  • * 単関節丘亜綱 : イシノミ目
  • * 双関節丘亜綱
  • ** 無翅下綱 : シミ目
  • ** 有翅下綱
  • *** 旧翅節 : カゲロウ目、トンボ目
  • *** 新翅節

旧翅類の単系統性にも疑問が持たれており、カゲロウ目とトンボ目のどちらかが先に分かれた可能性がある。ただし、それを反映した分類はまだ確立していない。

代表的な昆虫のほとんどは新翅類に含まれる。

目レベルの分類

†は絶滅目。

脚注

関連項目

参考文献

  • 斎藤哲夫・松本義明・平嶋義宏・久野英二・中島敏夫 『新応用昆虫学 三訂版』 朝倉書店、1996年、ISBN 4254420153。
  • 石川良輔 『昆虫の誕生 - 一千万種への進化と分化』 中央公論社〈中公新書〉、1996年、ISBN 4-12-101327-1。
  • 水波誠 『昆虫 - 驚異の微小脳』 中央公論新社〈中公新書〉、2006年、ISBN 4121018605。

外部リンク

kaa:Shıbın-shirkeyler stq:Insekte to:?inisēkite
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