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山形浩生

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より

山形 浩生(やまがた ひろお、1964年3月13日 - )は、評論家翻訳家野村総合研究所の研究員として勤務する傍ら評論、翻訳活動を行っている。

略歴

1964年、東京に生まれる。小学校1年生の秋から、約1年半、父親の海外勤務でアメリカに居住。麻布中学校・高等学校卒業。東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻を経て、野村総合研究所研究員。マサチューセッツ工科大学不動産センター修士課程修了。1998年、プロジェクト杉田玄白を立ち上げる。

人物

少年時代から熱心なSFファンで、パソコン少年でもあった。中学生時代には、橋本治岸田秀を愛読し、大きな影響を受ける。

東京大学在籍時、SF研究会で活動。亡くなったばかりの鮎川信夫の蔵書らしきウィリアム・S・バロウズ関連の書籍が大量に売りに出されているのを神保町の古本屋で見つけ、まとめて購入。東京大学SF研究会の仲間であり、のちに「特殊翻訳家」として知られるようになる柳下毅一郎と共に、バロウズの詳細なファンジンである『バロウズ本』を制作する。これが話題となり、前衛文学等を多数刊行していたペヨトル工房から、バロウズの翻訳を依頼される。大学卒業後もバロウズの翻訳を多数手がけるだけでなく、従来のバロウズの翻訳本の翻訳のレベルの低さを罵倒し、改訳を多数行っている。このような活動から、バロウズの日本への紹介者として知られる。

ニュー・ウェーブSF運動の旗手であるジュディス・メリルの著書『SFに何ができるか』からも大きな影響を受ける(のちに山形が翻訳することになる、『アイアンマウンテン報告』は、メリルの著書で紹介されていた本である)。また、ニュー・ウェーブSF雑誌「季刊NW-SF」(1969年から1982年にかけて、山野浩一が発行人、山田和子が編集長で18号刊行された半商業雑誌)からも影響を受け、山野が主宰する「NW-SFワークショップ」にも、最年少のメンバーとして参加していた。

先鋭的なSFや、前衛文学の翻訳も多数手がけている(なお、山形が評価するSF作家は、フィリップ・K・ディックスタニスワフ・レムJ・G・バラードジーン・ウルフアルフレッド・ベスターなどである)。

山形が広く知られるようになったきっかけは、これらの翻訳書の後書きでの過激な罵倒文体が、渋谷陽一の知るところになり、雑誌「CUT」での連載書評を依頼されたことによる。

1993年からマサチューセッツ工科大学に留学し、大学の本屋で見つけたポール・クルーグマンの著作に傾倒。公式サイトにおいてクルーグマンの論文の翻訳、The Economistの記事の翻訳などを公開している。クルーグマンの著作『The age of diminishde expectations』などを翻訳。クルーグマンの著作の翻訳で名前が知られるようになり、以後クルーグマン以外の経済書の翻訳も手がけている。

オープンソースコピーレフトの活動に精力的に参加しており、例えば、ローレンス・レッシグの翻訳、オープンソースやLinuxに関する著書、訳書も多数手がけている。また、自身の翻訳や著作の多くも、フリーで公開している。

もったいぶっているだけで中身がろくにないと判断したもの、たとえばポストモダン哲学や現代思想などニューアカ的・文化左翼的なものを批判することが多いそのためポストモダン哲学に批判を行ったアラン・ソーカルを評価している。また、訳書における「訳者解説」でも、しばしば、明解な内容解説や、著者の間違いの指摘、関連する論者への罵倒などを行う。

知の欺瞞』ローカル戦として浅田彰構造と力』におけるメタファーとしてのクラインの壺モデルを間違いだと批判した(『山形道場』に収録。文庫版では削除。)。この批判については、大阪大学数学教室のトポロジスト菊池和徳が浅田は間違っていないとする異論を唱えた

また、『オルタカルチャー日本版』に収録されている文章で、SF評論家小谷真理の著作をパートナーの巽孝之が代筆している(ほどそっくりである)と揶揄したため、小谷から訴訟を起こされて敗訴している自分のWebページに件の詳細を載せて、自らの判断について詳細を載せている http://cruel.org/trial/。この事件は、巽や小谷のSF評論が、表面的に類似している作品を並べて論じるのみであり、評論対象の作品の本質についてまったく述べていないという批判といらだちが、山形に事前にあったため起きた。

さらに、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』を批判した際には、抗議を受けてサイト上にお詫びを出すソース上に「Seems I never learn...」と書いていたなど、罵倒したことを謝罪するケースもある。

思想的にはリバタリアニズムの傾向があるが、そのためか、環境政策への疑いが強くリバタリアニズム自体、環境保護に必須とも言える政府の規制やいわゆる「環境権」について否定的な立場を取っている。また現状の環境政策がコストを考えると効果を挙げていないことも翻訳を通して指摘している。地球温暖化に対してはブッシュ政権の政策(京都議定書離脱)を支持している。ただし、山形は政府による経済政策を否定しているわけではなく、リバタリアニズムであると言い切ることはできない。環境問題については、「短期の変動に大騒ぎせず、長期的なデータをもとに最善の判断を下す」ゴア『不都合な真実』評と対抗本

http://cruel.org/other/presidentgore.htmlことが重要だと主張している。

イラク日本人人質事件に関して、「社会のプールは有限だから、真に有用な活動のために温存しよう。自己努力をさぼってプールを浪費したがる個人は拒絶するか、プールの目減り分の一部負担を要求するのが正しい社会運営だ。国や政府は大きな社会とその管理人なんだよ。」と主張。自己責任論を支持し、被害者の擁護は「自己責任否定論者」であると主張した。さらに、『サイゾー』2004年8月号において「(橋田信介はそれなりの業績があったが)あの人質5人は、少なくともこれまでは何もしてないし、これからも何ら役にたつことはしないだろう、というのが多くの人の目には明らかだった。」と主張した。

「地獄への道は善意で敷き詰められている」ちなみにこの諺はマルクス資本論』第1巻第3編第5章第2節「価値増殖過程」にもあり、"The road to"のない"Hell is paved with good intentions."はジェイムズ・ボズウェルの『サミュエル・ジョンソン伝』や:en:John Rayの著作、 "Hell is full of good intentions or desires."はクレルヴォーのベルナルドゥスの著作にみられる。というカール・マルクスらの言をしばしば引き、人々の善意に拠りかかった各種の活動や見解に強く反論する一方で、年に百万円を超える災害援助や非営利団体への寄付を行っている。

また一方、本業で発展途上国の惨状を詳細に見ているせいか、グローバリズムにも基本的には賛成と述べている。

著書

  • 『新教養主義宣言』 晶文社 ISBN 4794964153 1999年12月
  • 『山形道場―社会ケイザイの迷妄に喝!』 イーストプレス ISBN 4872572483 2001年3月
  • 『コンピュータのきもち 新教養としてのパソコン入門』アスキー ISBN 4756141587 2002年10月
  • 『たかがバロウズ本。』大村書店 ISBN 4756330169 2003年2月
  • 『新教養主義宣言(文庫版)』河出書房新社 ISBN 4309408443 2007年4月
  • 『新教養としてのパソコン入門(アスキ−新書) コンピュータのきもち』アスキー ISBN 9784756149527 2007年7月
  • 『要するに』河出書房新社(河出文庫) ISBN 4309408834 2008年(『山形道場』の文庫版)

共著

訳書以外の解説執筆

  • ロバート・スペクター『アマゾン・ドット・コム』日経BP社 2000年7月 ISBN 4822241912 -「解説 アマゾン・コムから学ぶべきこと」
  • 大室幹雄『滑稽 古代中国の異人(ストレンジャー)たち』岩波現代文庫 2001年12月 ISBN 4006000693
  • J・G・バラード『コンクリート・アイランド』太田出版 2003年8月 ISBN 4872337727 - 17,000字に及ぶ解説「J.G.バラード:欲望の磁場」を収録。
  • ウィリアム・バロウズ『裸のランチ(河出文庫)』河出書房新社 2003年8月 ISBN 9784309462318 - 鮎川信夫訳だが、山形が訳文に一部手を入れているという。
  • ウィリアム・バロウズ『ジャンキー完全版(河出文庫)』河出書房新社 2003年12月 ISBN 4309462405 - 鮎川信夫訳だが、山形が訳文に一部手を入れているという。
  • 恩田陸『図書室の海(新潮文庫)』新潮社 2005年07月 ISBN 4101234167
  • アルフレッド・ベスター『ゴーレム100(未来の文学)』国書刊行会 2007年6月 ISBN 4336047375

訳書

英語訳書

  • 楠本まき『エッグノッグ』祥伝社 2004年11月 ISBN 439646004X
  • 日野日出志『Hell Baby』 Blast Books 1995年1月 ISBN 0922233128

対談本

  • 山本一郎『美人(ブス)投票入門』オーエス出版、2004年、ISBN 978-4-7573-0213-6、(4章に対談収録)
  • 井上トシユキ 神宮前.org『2ちゃんねる宣言 挑発するメディア』文藝春秋、2001年、ISBN 9784163580500

DVD等

  • アーキグラム・ムービーズ!』アップリンク(字幕翻訳担当)
  • 『ウィリアム・S・バロウズ ザ・ファイナル・アカデミー・ドキュメンツ』トランスフォーマー 2008年4月(監修担当)

脚注

関連項目

外部リンク

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