『私花集』(アンソロジィ)はシンガーソングライターさだまさしの1978年3月25日発表のソロ3枚目のオリジナル・アルバムである。
アルバムの概要
私小説的な内容の歌(例えば「SUNDAY PARK」)が多いアルバムである。また、梶井基次郎の小説『檸檬』をベースに舞台を御茶ノ水に置き換えた「檸檬」のアルバム・バージョン、さだの代表作の一つに挙げられる「案山子」、山口百恵に提供した名曲「秋桜」と「最后の頁」、そして、発表以来ファン投票では常に第1位に輝いている「主人公」など、さだまさしを語る上で重要な曲が収録された1枚である。
なお、このアルバムでは前作の『風見鶏』に引き続いてジミー・ハスケル(Jimmie Haskell,サイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」などのアレンジを担当)が、ストリングス・アレンジ(曲によってはアレンジの全て)を手がけており、ストリングスもカリフォルニア州で録音したものを使用している。
収録曲
アナログA面
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最后の頁(ページ)
#: 「秋桜」のカップリング曲として山口百恵に提供された(ただし山口盤のタイトル表記は「最
後の頁」である)。
#: テーブルの上にマッチ棒を「サヨナラ」という文字の形に並べて火を付ける、という描写が歌詩中にある。当時さだがパーソナリティを務めたラジオ番組に、「真似をしたら机を焦がして母親に叱られた」という投書があったという。
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SUNDAY PARK
#: 1977年11月にシングル・リリース済みの作品である。シングル盤「案山子」のB面曲。
#: 公園の移り行く風景と自分の過ぎ去った愛を重ね合わせて「自分の置かれた境遇ですら、淡々と過ぎて行く現実のコマの一つに過ぎないのかも?」と気持ちが整理されて行く様を唄った叙情歌。当時持っていたラジオ番組ではこのイントゥルメンタル曲をテーマ曲代わりに使っていた。
#: 「この世は虚いかも知れない。だからこそ、束の間の幸せ、温かみ、優しさを我々人間は大事にしようとするのかも知れない」という寂静観(これが主要なさだのテーマだと言われている)が表現された曲の中でも特異にモダンな曲調になっているのが特徴(さだが寂静観を歌に込めた場合、古めかしい、または土着的な曲調にしているものが大半であるのに)。
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檸檬(れもん)
#:
梶井基次郎の小説『
檸檬』をベースに舞台を
御茶ノ水に置き換えた歌。青春の無常感に駆られる女性心理を鮮やかな色彩描写に描き出した秀作で、ファンの間でも名曲と挙げる声が大きい。歌詩に「
聖橋から
レモンを投げる」という描写があるが、さだはこの歌が
白線流しのように、社会現象にならないかという希望と不安を抱いていた。
#: また、さだはこの曲以外にも梶井の小説から曲のイメージを得ている。(例:「
桜散る」『
Glass Age』収録:『
櫻の樹の下には』参考)
#: 本アルバム発表後、
1978年8月10日にこの曲はシングル盤でリリースされた。その際作品は渡辺俊幸による新アレンジでリメイクされ、歌詩も一部変更がなされている。ライヴでは「檸檬」は渡辺俊幸のアレンジに基づいて演奏されることが多い。ただし歌詩は私花集ヴァージョンで歌われる。
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魔法使いの弟子
#: 父親が我が子に対して「自分は昔魔法使いの弟子だった」と法螺を吹く歌。エンディングに少女の笑い声と「お前、もう寝なさい」と言うさだの声が入っている。さだは「自分の子供はこの話を信じるくらい馬鹿な子に育てたい」と
ライナーノーツに書いていた。
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フェリー埠頭
#: 恋人と別れた女性の悲しみを船の出港の情景に合わせて歌った曲。後に弟分のチキンガーリックステーキがトリビュートアルバム内で歌っている。
アナログB面
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天文学者になればよかった
#: 恋の失敗をした男を設計技師に見立て、恋の失敗を設計ミスに喩えて振り返らせることで、気持ちを吹っ切って行く男の心理を唄っている歌。相手である女性の気持ちを一切問題としていない「恋愛に対する男のピントのズレ振り」を自嘲的に唄っている歌でもある。さだはこの自棄になった男と酒を酌み交わし、自分のことを棚に上げて「いかに女の浅薄か」と言いたいと
ライナーノーツに書いていた。なぜかNHKの特番「
新春いきなり生放送!!「年の初めはさだまさし」」およびその続編のオープニングには、この曲のインストゥルメンタル版が使われている。
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案山子(かかし)
#: 1977年11月にシングル・リリース済みの作品である。
#: 都会で暮らす弟を思いやる歌。モチーフになっているのは台湾に留学した弟
繁理であるが、13歳で単身上京したさだ自身の体験が根底にある。原風景としてさだとゆかりの深い
島根県の
津和野ではないかといわれている。
#: さだの代表曲の一つであり、一時期さだ自身が最も気に入っている作品として挙げていた。
#: 「案山子」を最後に
1985年の『
ADVANTAGE』の「軽井沢ホテル」/「夢」まで既発シングル曲をオリジナル・アルバムには収録しなかった。
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秋桜(コスモス)
#: 歌手
山口百恵が1977年
10月1日にリリースした作品である。さだによるセルフ・カヴァー。嫁ぐ娘が母を想う楽曲であり、結婚式披露宴では定番曲の一つになっている。さだは、それまでの山口のイメージを覆すような楽曲をあえて作ったと言う(その後、山口百恵の代表曲の一つに数えられるようになった事から、さだの先見性を評価する声も少なくない)。
#: 山口はレコーディングの際、さだが「まだピンと来ないでしょう?」と訊ねた時には「はい」と正直に答えたそうだが、結婚して引退するラストコンサートの日に「この歌の意味がようやく分かりました」というメッセージをさだに送ったという。
#: 山口のファルセットを発揮するために高音域を選んだ曲作りがなされている。
#: 後に同じシチュエーションを母親の視点から歌った作品「
秋の虹」(『
家族の肖像』に収録)が制作されている。
#: 当初、さだはタイトルの『秋桜』を、「
コスモス」と読ませるつもりはなく、本来の和名である「
あきざくら」とするつもりであった。(さだは後に小説、『解夏』内の短編集の中に
『秋桜(あきざくら)』という作品を出す。)
#: 山口盤の
萩田光雄のアレンジとは相当異なったフォーク・ソング調のアレンジが施されている。ただしライヴではさだは萩田によるアレンジに基づいた編曲で歌うことも多い。
#: 近年
桜ソングブームでこの曲もタイトルから桜ソングとして取り上げられることが多々あるが、
コスモス自体は
桜の
バラ科と全く異なる
キク科の上に秋に咲く植物であり、桜とは全く関係がない。
#: さだは妹
玲子が嫁ぐ日のことを想像してこの楽曲を制作したのだが、当の玲子は未だ独身である。(2008年3月現在)
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加速度
#: 公衆電話から別れを告げる恋人の声に耳を傾けている歌。最後のコインが落ちた時に恋が終わる。
#: 作曲・編曲を担当した渡辺俊幸は
ビートルズを意識したと語っている。
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1978年8月10日にシングル盤「檸檬」のB面曲としてシングル・カットされた。ただしシングル・ヴァージョンはイントロ前に雨の効果音が入る。
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主人公
#: 発表以来、ファンの人気投票では常に1位に輝きつづける人気曲。「自分の人生は自分が主人公」という一見当たり前のことが歌われているが、それが落ち込んだ気持ちになった時や自分に自信が持てない時の応援歌として受け入れられているのではないか、とさだ自身は分析している。なお、歌詩には当時憧れていたパリ(実際に行ったら失望したらしいが)を思わせるフレーズが織り込まれている。
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すべて作詩
[さだまさしの作品はすべて「作詞」ではなく「作詩」とクレジットされているので、誤記ではない。]:さだまさし
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作曲:さだまさし、(「加速度」渡辺俊幸)
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編曲:ジミー・ハスケル(「檸檬」「魔法使いの弟子」「主人公」)、渡辺俊幸(前述以外)
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「最后の頁」のストリングス・アレンジ:ジミー・ハスケル
脚注