読み込み中...政令指定都市(せいれいしていとし)とは、地方自治法第二百五十二条の十九第一項で「政令で指定する人口五十万以上の市」と規定される市である。「政令市」とも通称され、2007年(平成19年)4月1日現在、全国に17市ある。法令では「指定都市」(同法)や「指定市」(警察法)などと表記される。
この項目では、政令指定都市を単に「指定都市」と表記することがある。また、地方自治法の条項については、法律名「地方自治法」を省略することがある。
指定都市の制度は、日本の大都市等に関する三つの特例制度の一つであり、1956年(昭和31年)に運用が開始された。地方自治法第二編第十二章第一節「大都市に関する特例」に、指定都市に関する、特例を中心とした規定がある。指定都市は“人口五十万以上の市”とされている(第二百五十二条の十九第一項)。特例制度の他の二つは、第二節に規定がある中核市の制度(人口三十万以上、1995年開始)、第三節に規定がある特例市の制度(人口二十万以上、2000年開始)である地方自治法(昭和22年法律第67号), 法令データ提供システム. (総務省)2008年10月15日閲覧. 大都市に関する制度について 【PDF】, 2005年1月17日. (総務省): 総務省第28次地方制度調査会第14回専門小委員会(参照)における総務省配付資料。。→#指定都市の権能、#人口要件も参照。
指定都市は、条例で区を設けるものとされている(第二百五十二条の二十第一項)。この区は、東京都の特別区などと区別して、「行政区」と通称される。→#組織も参照。指定都市の制度は、地方自治法の1956年(昭和31年)の一部改正(昭和31年法律第147号)に含まれる形で、同年9月1日から実施された。同日から、指定都市を指定する政令が施行されて5市が指定都市に移行。以後、この政令の一部改正で新たに市が指定され、その施行日から指定都市に移行している地方自治法第二百五十二条の十九第一項の指定都市の指定に関する政令(昭和31年政令第254号), 法令データ提供システム. (総務省)2008年10月15日閲覧. 指定都市一覧. (総務省)。
なお、指定都市の制度により、大都市に関する二つの旧制度が置き換えられた。一つは、五大都市行政監督ニ関スル法律五大都市行政監督ニ関スル法律(大正11年法律第1号)の沿革, 日本法令索引. (国立国会図書館)を根拠とした制度で、対象は京都市、大阪市、横浜市、神戸市、名古屋市であった(この5市は最初の指定都市)。もう一つは、地方自治法を根拠に1947年(昭和22年)以降、法令上、存在していた特別市の制度で、人口五十万以上の市を法律で指定するものだったが、実際には一市も指定されなかった。→#沿革も参照。
| 都道府県 | width="110px"|指定都市 | width="80px"|指定日 | 行政区 | |
|---|---|---|---|---|
| 北海道 | 80px 札幌市 | 1972年 (昭和47年) 4月1日 | 中央区・北区・東区・白石区・豊平区・南区・西区・厚別区・手稲区・清田区 (北区に分区構想あり) |
|
| 東北地方 | 宮城県 | 80px 仙台市 | 1989年 (平成元年) 4月1日 | 青葉区・宮城野区・若林区・太白区・泉区 (青葉区に分区構想あり) |
| 関東地方 | 埼玉県 | |||
| 千葉県 >|align="center"| | ||||
| 神奈川県 | ||||
| 中部地方 | 新潟県 | |||
| 静岡県 | 80px 静岡市 | 2005年 (平成17年) 4月1日 | 葵区・駿河区・清水区 (さらなる分区構想がある) |
|
| 愛知県 >|align="center"|80px 名古屋市 | 1956年 (昭和31年) 9月1日 | 千種区・東区・北区・西区・中村区・中区・昭和区・瑞穂区・熱田区・中川区・港区・南区・守山区・緑区・名東区・天白区 (中川区、港区に分区構想あり) |
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| 近畿地方 | 京都府 | 80px 京都市 | 1956年 (昭和31年) 9月1日 | 北区・上京区・左京区・中京区・東山区・下京区・南区・右京区・伏見区・山科区・西京区 (伏見区は分区構想が数度出ては消えている) |
| 大阪府 | ||||
| 兵庫県 >|align="center"|80px 神戸市 | 1956年 (昭和31年) 9月1日 | 東灘区・灘区・兵庫区・長田区・須磨区・垂水区・北区・中央区・西区 (北区に分区構想あり) |
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| 中国地方 | 広島県 | 80px 広島市 | 1980年 (昭和55年) 4月1日 | 中区・東区・南区・西区・安佐南区・安佐北区・安芸区・佐伯区 (かつては安佐北区に分区構想があった) |
| 九州地方 | 福岡県 | 80px 北九州市 | 1963年 (昭和38年) 4月1日 | 門司区・若松区・戸畑区・小倉北区・小倉南区・八幡東区・八幡西区 (かつては八幡西区に分区構想があった) |
| 80px 福岡市 | 1972年 (昭和47年) 4月1日 | 東区・博多区・中央区・南区・西区・城南区・早良区 (東区に分区構想あり) |
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指定都市が特例で処理できる事務は、第二百五十二条の十九第一項(後に抜粋)で掲げる19の事務のうち、都道府県が法令に従って処理するとされているものから、政令で定められる(同条同項)なお、この指定都市の特例処理事務から中核市の特例処理事務を限定し、さらに特例市の特例処理事務を限定する仕組みになっている(第二百五十二条の二十二第一項、第二百五十二条の二十六の三第一項)。。
また、事務処理への都道府県の関与については、都道府県知事や都道府県の委員会のことになっている(同条第二項)中核市や特例市に関しては、処分についてa.に相当する特例規定は無い。命令についてb.に類似する特例規定はあるが、委員会の命令は対象とならない(第二百五十二条の二十二第二項、第二百五十二条の二十六の三第二項)。。
一般の市から移行する場合、指定都市には都道府県が有する権能の8割が、中核市については指定都市の7割、特例市については中核市の3割に相当する権能が移譲されるといわれている第28次地方制度調査会第23回専門小委員会における総務省の説明による。。なお、地方自治法以外の、個別法令(例えば道路法、河川法、地方教育行政法など)の規定や都道府県の条例によっても権限が移譲されうる。
指定都市は、“市長の権限に属する事務を分掌させるため、条例で、その区域を分けて区を設け、区の事務所又は必要があると認めるときはその出張所を置く”ものとされている(第二百五十二条の二十第一項)。この区は「行政区」と通称される。区の事務所、通称「区役所」の長は、当該指定都市の職員の中から市長が選出する(各市の行政組織によるが、一般的に局長クラスまたは部長クラスの役職)。指定都市は、必要と認めるときは、条例で、区ごとに区地域協議会を置くことができ、その場合、その区域内に地域自治区が設けられる区には、区地域協議会を設けないことができる(第二百五十二条の二十第六項)。
区役所にどの程度の業務を担わせるかは、指定都市によって幅がある。戸籍、住民基本台帳、租税の賦課、国民健康保険、国民年金、福祉などの日常的・定型的な窓口業務のみを担当させる「小区役所制」(大阪市、名古屋市、京都市など)があれば、保健、土木、建築などの業務を幅広く行う「大区役所制」(川崎市、広島市、仙台市など)もある。
なお、東京都の区は特別区である。区(行政区)が普通地方公共団体たる指定都市の地域区分であるのに対し、都の特別区は独立した法人格を持つ「特別地方公共団体」で、ほぼ一般の市と同じ事務処理権限を有している。また、これ以外に「... 区」と名前が付く地域区分には、地域自治区、合併特例区、財産区がある。
地方教育行政の組織及び運営に関する法律には、指定都市に関する特例が定められている。指定都市の県費負担教職員の任免、給与の決定、休職及び懲戒に関する事務、並びに研修は、当該指定都市の教育委員会が行う。
指定都市は、基本的に都道府県が行う事務のほとんどを独自に扱えるが、先述のとおり一般的には「8割程度」と評価され、都道府県の影響力が完全に排除されるわけではない。
以下に、都道府県と指定都市の間の役割分担の一例を示す。| 事務 | 都道府県の事務 | 指定都市の事務 |
|---|---|---|
| 民生行政に関する事務 | ||
| 保健衛生に関する事務 | ||
| 都市計画に関する事務 | ||
| 文教行政に関する事務 | ||
| 農林水産行政に関する事務 | 農林水産行政に関する授権は特にない。 | |
| 警察の設置に関する事務 |
このほか、後期高齢者医療制度においては、都道府県が直接事務に携わるわけではないが、指定都市も他の市町村とともに都道府県単位で広域事務組合を作り、そこで事務を取り扱う。指定都市の区役所は窓口代理業務を行うのみである。
移行に起因する事務移譲により、指定都市に新たに発生する財政需要額は、概ね5,600億円程度とされる総務省. "平成19年度地方財政白書"「市町村の規模別財政収支」項において総務省が算定した額による。。これに対し、税制上の措置として指定都市に図られる増収対策の半分以上は、道路の管理に関する予算(道路特定財源の一部を増額交付するもの)指定都市市長会. "指定都市の事務配分の特例に対応した大都市特例税制についての提言" (H17.12.22)の指摘による。で、それ以外の特例事務との純計で、おおむね3,000億円程度、税制上の措置が不十分であるとされる指定都市市長会. "平成20年度大都市行政の実態に即応する財源の確保等に関する要望"「税制措置」項において指定都市側が主張することを根拠とする。。指定都市制度には、都道府県側から指定都市側に対して交付金を交付する制度があるものの、行政上の負担割合の変更に伴い、逆に減収となる項目も存在する。このため、負担事務の増加に見合った増収を十分担保する措置が、必ずしも確保されるわけではない。
こうした経緯から、新規に指定都市へ移行する市の場合、移行と行政改革がセットで語られることがある。とくに平成の大合併期に、スケールメリットを期待した合併を経て誕生した指定都市では、移行に併せて地方債の繰上償還、これまで一般市町村として担当した行政分野での職員定員削減などが行われるたとえば堺市、静岡市の例。静岡市. "平成17年度一般会計決算の概要" 、堺市. "平成18年度当初予算の概要" など。。
上述のとおり、指定都市は各分野につき、完全に独立した行政を担当できるまでの事務移譲を受けるわけではなく、農林行政、防災行政については、ほとんど授権がない。一方で、都道府県と指定都市との間では、一部につき共通する行政を担当することから、両者の間での二重規制、二重行政に陥る可能性が指摘されることがある第28次地方制度調査会(総務省)。 "大都市制度のあり方に関する報告" の中で指摘。。法令上、指定都市は、一部の特例措置を除いては、一般の市町村と同列の制度の適用を受けるため、都道府県が市町村の行政を審査する行政不服審査制度に関する事項など、両者の関係について法令上あいまいな部分もある第28次地方制度調査会(総務省)。 "大都市制度のあり方に関する報告" の中で指摘。。新たな法令を制定することを通じ、都道府県に指定都市に対する勧告権を付与し、指定都市内の行政に関する関与権限を弱める案などが提唱される。
以下に大都市制度の沿革を記す。以下とは別に、首都圏整備法(昭和31年法律第83号)、近畿圏整備法(昭和38年法律第129号)などが大都市圏制度として制定されている(→三大都市圏)。
以下に記載する人口は、指定日直近の法定人口地方自治法第二百五十四条“この法律における人口は、官報で公示された最近の国勢調査又はこれに準ずる全国的な人口調査の結果による人口による。 ”, 法令データ提供システム. (総務省)2008年10月11日閲覧. (合併市町村を含む国勢調査人口)。なお、比較のため、指定前年に国勢調査がなかった場合に限り、指定前年10月1日の推計人口(緑字)も付記する。
神戸市は、1939年(昭和14年)に既に100万人(神戸市発表)に達していたが、戦争の影響で30万人台にまで落ち込んだ。戦後、周辺自治体と合併したが、1955年(昭和30年)の国勢調査時には100万人を回復していなかった。ただし、指定都市となった翌月の1956年(昭和31年)10月1日に、再び100万人(推計人口)に達した人口及び市域面積の推移(神戸市都市計画総局)。
実際に、千葉市以外は見込み通りに人口100万人以上となった。ただし、北九州市はここ数年100万人を割っている(参照)。
なお、以上の4市は、指定都市史上初めて、特別区最大の人口を擁する世田谷区を下回る人口で指定された。
指定都市移行の手続きは特に法令で規定されていないが、これまで指定都市に指定された都市では主に次のような手続きを経た上で、指定がなされている。
# 市議会で指定都市に関する意見書を議決 # 知事や県議会に対し、指定都市の実現への要望書を提出 # 県議会で指定都市に関する意見書を議決 # 総務大臣に対し、指定都市の実現への要望書を提出 # 関係省庁との協議 # 指定都市移行の閣議決定 # 政令の公布| 市 | 人口 | 道府県 | 人口 | 比率 | 統計日 |
|---|---|
| 札幌市 | |
| 仙台市 | |
| さいたま市 | |
| 千葉市 | 0, |
| 横浜市 | |
| 川崎市 | |
| 横浜+川崎 | |
| 新潟市 | 0, |
| 静岡市 | 0, |
| 浜松市 | 0, |
| 静岡+浜松 | |
| 名古屋市 | |
| 京都市 | |
| 大阪市 | |
| 堺市 | 0, |
| 大阪+堺 | |
| 神戸市 | |
| 広島市 | |
| 北九州市 | 0, |
| 福岡市 | |
| 北九州+福岡 |
指定都市自体が、独自に警察を設置・運営することはできない。ただ警察本部は、その管轄区域内に指定都市がある場合、指定都市に対応する市警察部を設置する(警察法第五十二条第一項)。市警察部の役割は警察本部によって異なるが、主に指定都市と警察本部の連絡や指定都市に所在する警察署の管理に関する業務を行う。
なお、自治体警察 (旧警察法)を参照のこと。
推計人口で、東京都の世田谷区は85万人以上、練馬区は70万人以上の人口を有するものの、現在の法律では、指定都市への移行は市に限られるため、これら特別区は指定都市となることができない。因みに、合併特例法下で指定都市となった4市は、いずれも世田谷区より人口が少ない(参照)。
なお、世田谷区議会第2回定例会(2007年6月)において、特別区再編と世田谷区の指定都市移行について代表質問があった際、副区長が「政令市を視野に入れておく必要もある」と答弁している平成19年第2回定例会(世田谷区)。
特定都区市内制度は、国鉄(現在はJR)の運賃制度のひとつである。大都市制度の1つとも見られるが、同制度と指定都市制度との整合性はない。
1969年5月10日、同制度が六大都市に導入された。しかし、当時、既に指定都市となっていた北九州市には適用されなかった。1972年9月1日には、1970年国勢調査人口が50万人以上だった未適用の市にも拡大適用された。ただし、新規適用市には、当時指定都市ではなかった都市(仙台市、広島市)や、指定都市であっても市域全域が適用されない市(川崎市)があった。これ以降、国勢調査人口が50万人以上の市や指定都市が生まれても、同制度は新規に適用されていない。
市町村の合併によって、現在以下の地域が指定都市移行を目指している。しかし、市町村合併協議の難航などにより、実現の見通しが立っていない都市が多い。また、実現可能性の高い中核市移行へ切り替え、将来的な目標として指定都市への意向を視野に入れるとしている市も増えている。
※注釈;広域行政圏と、都市圏(都市雇用圏など)は一致しない。法令で単に「政令で指定する市」と書かれている場合、各法令により指定基準が異なるため、指定都市(政令指定都市)と必ずしも一致しない。特定の市を「政令で指定する市」として定めている法令には、中小企業支援法、国民健康保険法、地方税法、国際観光文化都市の整備のための財政上の措置等に関する法律などがある。
また、地域保健法第五条第一項では、都道府県のほか、指定都市、中核市その他の政令で定める市又は特別区が、保健所を設置するものと定めている。これらの保健所を設置する市を保健所政令市という。