整数(せいすう、Integer)とは、0 とそれに 1 ずつ加えていって得られる数 (1, 2, 3, …) および 1 ずつ引いていって得られる数 (-1, -2, -3, …) の総称である。整数の全体からなる集合は普通、太字の Z または黒板太字の で表す。これはドイツ語 Zahlen(数・複数形)による。
代数的整数と対比させるために、有理数の中で整なものであるという意味で有理整数と呼ぶこともある。
素朴な説明
自然数 n に対して加法における逆元 -n を導入し、これを負の整数とする。負の整数に対しても結合法則、分配法則等が成り立つように加法ならびに乗法を定義すると、整数は加法に対してアーベル群(可換な群)をなし、乗法に関しては可換なモノイドをなす。
つまり、整数は可換環である。くだいていえば、普通に足し算、引き算、それにかけ算ができるということである。この環は代表的なユークリッド整域である。
例えば次のことは、整数が
環であることを用いれば
証明できる。
-
(-a) × (-b) = a × b
-
証明
-
a と -
a' を
a の
逆元とすると、
-
-a = -a + 0 = -a + {a + (-a' )} = (-a + a) + (-a' ) = 0 + (-a' ) = -a' 。
∴ -
a = -
a' つまり逆元は一つだけである。 ここから -(-
a) =
a も言える。さらに、
-
a × 0 = a × 0 + 0 = a × 0 + [a × 0 + {-(a × 0)}] = (a × 0 + a × 0) + {-(a × 0)} = a × (0 + 0) + {-(a × 0)} = a × 0 + {-(a × 0)} = 0 。
∴
a × 0 = 0 全く同様にして 0 ×
a = 0 も言える。
-
a × b + (-a) × b = {a + (-a)} × b = 0 × b = 0 。
∴ -(
a ×
b) = (-
a) ×
b 。
-
(-a) × (-b) + {-(a × b)} = (-a) × (-b) + (-a) × b = (-a) × {(-b) + b} = (-a) × 0 = 0 。
∴ a × b = (-a) × (-b) 。
-
Q.E.D.
整数の分類
-
正整数
-
1 以上の整数のこと。自然数を 1 から始めると定義している場合には自然数と同じ集合となる(自然数に0を含める流儀もある)。
-
負整数
-
負の整数を参照。
-
非負整数
-
負整数の補集合。つまり、0 以上の整数のこと。自然数を 0 から始めると定義している場合には自然数と同じ集合となる。自然数を 1 から始めると定義している場合、0 を加える際に、しばしばこの表現が用いられる。自然数を 0 から始めるか、1 から始めるかの議論を避けたい場合にも用いられる。
-
非正整数
-
正整数の補集合。つまり、0 以下の整数のこと。
整数化
実数を整数化する関数としては床関数や天井関数などがある。
形式的な構成
自然数の全体
N は減法について閉じていないが、上ではそれを補完するものとして負の整数を導入し、整数の全体
Z を構成した。それと本質的には変わらないが、よく知られる方法としてここでは、減法を陽に持ち出さずに、自然数の加法と乗法のみから
同値関係や商集合といった道具を使って、整数が形式的かつ厳密に構成できることを記しておく。
[以下の構成では、自然数には 0 を含まないという立場で記述しており、したがって自然数に 0 を含んでも含まなくてもどちらでも構わないことも注意していただきたい。]
まず、
直積集合 N2 =
N ×
N = {(
a,
b) |
a,
b は自然数} を考えよう。
[以下では (a, b) = a - b のことであるとして読んでもらって構わない。途中で同値関係で割って商集合を作る部分が多少抽象的であるが、(a, b) = a - b だと思って読めば、単に差の部分に注目して数を取り出しているのだと納得されるものと思う。]
N2 に加法
+ を
-
(a, b) + (c, d) = (a + c, b + d)
と成分ごとの和で定義する。当然
N2 はこの加法
+ について閉じている。さらに少し恣意的ながら、乗法
× を
-
(a, b) × (c, d) = (ac + bd, ad + bc)
で定める。また、
N2 の部分集合
R = {(
m,
m) |
m ∈
N} を用いて、
N2 に
同値関係 〜 を
-
(a, b) 〜 (c, d) ⇒ (a, b) + (d, c) ∈ R
と定義することができる。ここで、互いに同値であるようなものを同一視する。厳密には
N2 を同値関係 〜 で類別した集合(商集合)
N2/
R を考えるのである。これは、互いに同値なもの全体の集合(同値類)を元とするような集合である。(
a,
b) ∈
N2 の属する同値類を [
a,
b] ∈
N2/
R と表すことにする。つまり、[
a,
b] は
-
[a, b] = {(c, d) ∈ N2 | (a, b) 〜 (c, d)} = {(a, b)} ∪ {(a, b) + (m, m) | m ∈ N}
となる集合である。同値類を [a, b] のように表したとき、(a, b) をこの同値類の代表元と呼ぶ。代表元は同値なものでありさえすれば他のものに取り替えることができる。
商集合
N2/
R に加法 + と乗法 × を
-
[a, b] + [c, d] = [(a, b) + (c, d)] = [a + c, b + d]
-
[a, b] × [c, d] = [(a, b) × (c, d)] = [ac + bd, ad + bc]
と定義すると、これらは代表元の取り方によらずに、同値類同士の演算としてうまく定義されていることが確かめられる。
このとき、
単位元である。また、自然数' target='_blank'>
m を対応させる写像は
単射で
-
[m + 1, 1] + [n + 1, 1] = [m + n + 2, 2] = [(m + n) + 1, 1],
-
[m + 1, 1] × [n + 1, 1] = [(m + 1)(n + 1) + 1, (m + 1) + (n + 1)] = [mn + 1, 1]
を満たす(準同型)ので N は N2/R に演算まで込めて埋め込める。記号の濫用ではあるが、自然数 m を埋め込んだ先と同一視して m = [m + 1, 1] と書くことにし、これを(正の)整数 m と呼ぼう。
同様の埋め込みは、自然数
m に対して [1,
m + 1] を対応させることでも得られるが和と積は
-
[1, m + 1] + [1, n + 1] = [1, (m + n) + 1],
-
[1, m + 1] × [1, n + 1] = [1 + (m + 1)(n + 1), (m + 1) + (n + 1)] = [mn + 1, 1]
になる。自然数 m に対し、新たな記号 -m を [1, m + 1] を表すものとして導入し、これを負の整数 -m と呼ぼう。負の整数同士の積が正の整数になっていることが確認できる。
このとき、m + (-m) = [m + 1, 1] + [1, m + 1] = [m + 2, m + 2] = R だから、負の整数 -m = [1, m + 1] は N2/R においてはちょうど、正の整数 m = [m + 1, 1] の加法に関する逆元になっている。R をあらためて 0 と書くことにして、N2/R = {m, 0, -m | m ∈ N} を整数全体の集合とよび、あらためて Z と書くことにしよう。
このようにして整数の全体 Z が厳密に定義されが、なお定義に従えば Z において結合法則や分配法則などの環の公理が満たされることがきちんと証明できる。
整数環のイデアル
互いに素な二つの整数
x,
y に対して、
ax +
by = 1 を満たす整数
a,
b が存在することは
ユークリッドの互除法などにより保証される。
このとき、
x,
y がそれぞれ生成する単項イデアル (
x), (
y) について
-
(x) + (y) = Z
が成り立つ。
同様に、
x と
y の最大公約数が
d のとき、
ax +
by =
d を満たす整数
a,
b が存在するので、
-
(x) + (y) = (d)
が成り立つ。
これらのことから、Z が単項イデアル整域であることがわかる。また、素因数分解も考えることにより、素数 p の生成する単項イデアル (p) は素イデアルであることが分かるが、さらに極大イデアルであることがわかる。実際、(p) に含まれない x をとり、x と p を含むイデアル (x, p) = xZ + pZ を考えると、このとき x と p が互いに素であることから、(x, p) = Z とな(p) は極大イデアルでもある。Z の極大イデアルはすべてこのように素数 p の生成するイデアルとして得られることも言える。
また、0 の生成するイデアル {0} は素イデアルであるが極大イデアルでなく、1 の生成するイデアルは
Z 自身であるので、素数とは
Z の自明でない素イデアルを生成する数として特徴付けることも出来る。
(スタブ)
アーベル群への作用
X が加法群(群の演算が + で書かれる
アーベル群)であれば写像
Z ×
X →
X; (
n,
x) →
nx を
-
{n {\rm\ times} \atop \overbrace{x + x + \cdots + x}} & n > 0 \\[10pt]
0 & n = 0 \\[5pt]
{|n| {\rm\ times} \atop \overbrace{(-x) + (-x) + \cdots + (-x)}} & n < 0
\end{cases}
と定義することにより、Z の X への作用すなわち、Z から X の自己準同型環 End(X) への準同型が定まる。したがって、任意の加法群は Z-加群である。
コンピュータにおける整数表現
コンピュータの内部では電気的な信号の有無を 1 と 0 に割り当て、2進法を用いて整数を表現するのが基本である。通常は、2 バイト(16 ビット)または 4 バイト(32 ビット)の範囲で表現できる範囲の数を扱う。負の値を扱う場合は、2の補数表現などが用いられる。通常は有限の範囲の整数しか扱うことができないが、処理速度を犠牲にして無限の整数を扱う方法もある。
事務処理など金額などの大きな桁や 10 進小数を正確に扱う必要がある場合、二進化十進表現を用いる。
脚注
参考文献
関連項目
外部リンク
gan:整數
yo:N??mbà odidi