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ねじれ国会

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より

ねじれ国会(ねじれこっかい)とは、日本国会において、衆議院与党が過半数の議席を持つ一方で、参議院では野党が過半数の議席を維持している状態のこと。2007年7月の、第21回参議院議員通常選挙の結果を受けてニュースや新聞などでよく使われるようになった言葉だが、逆転国会などとも呼ばれる。

概要

ねじれ国会の状態では、衆参両院で与党が過半数を維持している状況と違い、参議院で衆議院と異なる議決が起こりやすくなる。

予算の議決・条約の議決・首相指名の議決
予算、条約、首相指名の議決などにおいて、両院の議決が異なることが起きやすくなる。この内、予算案の議決、条約の議決、首相指名の議決に関しては、議決が異なった場合は衆議院の議決を国会の議決とすることができる(衆議院の優越)。
法律案の議決
法律案の議決が異なった場合は、衆議院可決案を成立させるためには衆議院で3分の2以上の多数で再可決する必要がある(衆議院の再議決)。そのため、与党が衆議院で3分の2以上の議席を獲得していない場合、与党法案の中には参議院で修正や否決をされ、与党法案が原案として成立できない法案が出てきやすい現象が生まれる。予算や条約の議決自体は衆議院の議決を国会の議決とすることができるが、関連法案が野党に反対され参議院で可決できない場合、事実上予算の執行や条約の発効に支障が生ずる場合がある。与党が衆議院で3分の2以上の議席を獲得すれば、参議院が衆議院議決案を否定しても衆議院再議決権を行使して成立させることが可能である。
衆議院可決法案の60日間放置などによる審議の遅延・会期切れによる法案の廃案
衆議院で与党が3分の2以上の議席を占める場合、衆議院可決法案を参議院が議決しなくても、衆議院可決後から60日間経過すれば、衆議院側において「参議院が否決した」とみなすことが出来る(みなし否決)。しかし、60日間は審議遅延が可能になること、また60日間経過する前に会期切れが見込める場合なら継続審議にせず審議未了で廃案に追い込むことができる。
両院同意人事
日本銀行政策委員や会計検査院検査官や人事院人事官などの人事は衆参両院で同意を得る必要がある。国会同意人事では衆議院の優越が認められていないため、参議院が同意人事を否決した場合、政府は新たな人選に迫られることになる(かつては「会計検査官」「人事官」など、衆議院の同意だけで両議院の同意とする衆議院の優越が認められた人事も存在した)。国会閉会中または衆議院解散中のため事前の同意が得られない場合は暫定的に任命をすることもできるが、あくまで次国会で同意を得るための暫定人事であるため、抜本的な対処とはならない。
両院承認案件
自衛隊の防衛出動の承認、NHK予算の承認などの国会の両院の承認が必要な案件は参議院が同意しないと両院協議会を開くが、合意できない場合は自衛隊出動が撤退になったり、NHKの予算支出が暫定予算扱いで対処するなど、政権運営に支障を来たすようになる。
臨時国会特別国会の会期及び会期延長
臨時国会特別国会の会期及び会期延長における両院の議決では、衆議院の優越が認められているため、国会会期の長さに関しては衆議院で過半数を持つ与党がある程度コントロールできる。
野党主導による閣僚等問責決議可決
政府要職に不適格と判断される閣僚などへの問責決議が可決しやすくなる。問責決議には法的拘束力はないが、問責対象閣僚などが出席する国会審議において野党議員が出席を拒否する(審議拒否)大義名分を与え、国会審議が混乱する恐れがある。審議拒否という行動には野党の問責理由を世間が支持すれば閣僚が辞任せざるをえないと考えられ、野党の問責理由を世間が支持しなければ野党は国会審議に復帰せざるをえないと考えられている。
野党主導による首相問責決議可決
また首相問責決議が可決されれば、閣僚問責決議と同じく首相が出席する国会審議において野党議員が出席を拒否する事態が想定される。首相問責決議可決されれば、事実上内閣不信任決議可決と同じ行為があり、首相は内閣総辞職するか衆議院解散するかに追い込まれると考えられている。一方で、そのような考えに対し、問責決議に法的拘束力がないことから、首相問責決議可決に対しては憲法で規定された内閣信任決議を衆議院で可決させて、憲法上の内閣信任という効力を持たせ、法的根拠のない首相問責決議効果を打ち消す方法も存在する。その場合でも、与党主導の衆議院での内閣信任決議可決と野党主導の参議院での首相問責決議可決のどちらを世間が支持するかで、内閣総辞職するか衆議院解散するかに追い込まれるか否かが決まってくる。
野党主導の国政調査権発動や証人喚問
参議院で野党が過半数となり、野党が参議院主要委員長を獲得すれば、参議院で野党が主導をして、与党が国民に知られたくないないような政権の腐敗や疑獄事件などに絡み、野党が主導して国政調査権発動や証人喚問を議決することができる。首相や現役閣僚や党幹部などの与党大物政治家を証人喚問すること可能となる。証人喚問は証言拒否や偽証した場合は国会の議決で刑事罰が規定されている議院証言法違反として告発することができる。
ただし、参議院では1955年以降、証人喚問議決は全会一致が慣例となっており、与党が反対すれば出来ないことになっている。法律規制ではないため、野党が慣例を破ることが可能だが、出席拒否や偽証罪に関する議院証言法違反の告発は出席委員の三分の二以上の賛成する必要が法律で明記されており、与党が三分の一以上の勢力がある場合、議院証言法違反の告発は野党単独ではできず、与党が反対した場合の証人喚問の実効性が疑問視される。しかし、世間から見て野党の証人喚問議決や議院証言法違反の告発が正当と思われている場合、あからさまに身内を庇うことは与党への打撃につながり、次回選挙に影響するとされるため、与党が軟化すると予想される。

評価

以上のようにねじれ国会の状態では、国会の運営が停滞し、与党が自身の政策を推し進めることが困難になる。が、与党の意見だけで政治が進んでしまわないことは良いことだという見方もあり、一概にねじれ国会が良い状態か悪い状態かを決めつけることはできない。

また、衆議院で過半数の議席を持つ与党が参議院でも過半数の議席を維持し続ける事が当然なのかを問う声も政治評論家やジャーナリストを中心に上がっている。“ねじれ国会”なる表現を問題視する勢力もあり、問題視する立場からは“逆転国会”や“"バランス国会”と“ねじれ国会”より肯定的な表現をする場合がある。

解消

以下のような解消法がある。
  • 与党に対して対立姿勢を示す野党と距離を置いている中間政党を与党に取り込むことで、参議院の与党過半数を回復する方法。
  • 与党との対立姿勢を鮮明な対立姿勢を示す大型野党の中から、党執行部に不満を持つ反主流派参議院議員を与党陣営に引き抜いて、与党が参議院過半数を回復する方法。
  • 野党が与党の中から党執行部に不満を持つ反主流派衆議院議員を野党陣営に引き抜いて、与党が衆議院過半数割れにさせ、衆議院で内閣不信任決議を可決しやすくする。内閣総辞職後に次期首相指名選挙で野党統一候補を首相指名にし、参議院過半数勢力が衆議院過半数となり政権を担当する方法。
  • 衆議院議員総選挙の結果、参議院過半数勢力の野党が衆議院でも過半数勢力となる方法。但し、そのまま与党が総選挙で過半数を維持した場合は解消されない。
  • 参議院選挙で与党が参議院過半数を獲得する方法。しかし、参議院には解散がないため、次回参議院選挙まで待つ必要があり、次期参議院選挙が遅い場合、ねじれ状態が長く続くことになる。また参議院選挙は半数改選であるため、直近の参院選で与党が大敗していた場合は、次期参院選での与党過半数獲得が見込みにくくなる。

過去のねじれ国会の例

1989年参院選
1989年参院選では自民党が惨敗して参議院過半数を失った。その後、宇野宗佑首相辞任後の首班指名選挙で衆議院は自民党の海部俊樹、参議院は社会党土井たか子と衆参異なる指名になった。39年ぶりに首相指名が異なる両院協議会が開かれるも一致しなかったため、衆議院議決優越により海部が首相になった。その後、12月に参議院で提出されていた消費税廃止法案が自民党が反対するも、野党の賛成多数で可決され、衆議院に送付された。1990年2月、衆議院を通過した1989年度補正予算案が参議院で否決され、予算案をめぐっては戦後初の両院協議会が開かれた。両院協議会で一致しなかったため、衆議院議決優越により政府原案通り成立した。
その後、自民党は民社党公明党と政党間協議で同調する自公民路線という形で参議院過半数を回復した。
1998年参院選
1998年参院選では自民党が惨敗して参議院過半数を失った。その後、橋本龍太郎首相辞任後の首相指名選挙で衆議院は自民党の小渕恵三、参議院は民主党菅直人と衆参異なる指名になった。両院協議会で一致しなかったため、衆議院議決優越により小渕が首相になった。その後の金融国会では政府が提出した金融再生法案が衆議院で可決されるも、参議院では野党の修正案を提示、最終的には自民党が野党案をほぼ丸呑みする形で成立した。また10月に参議院で防衛庁調達実施本部背任事件をめぐって、額賀福志郎防衛庁長官問責決議が野党の賛成多数で可決され、額賀長官は辞任に追い込まれた。
その後、自民党は自由党や公明党と連立をすることで、与党参議院過半数を獲得。ねじれを解消した。
2007年参院選
2007年参院選では自民党が惨敗して参議院過半数を失い、野党第一党の民主党が参議院第一党になった。その後、参院議運委員長に民主党の西岡武夫が選出され、参議院の議事の主導権は野党が握るようになった。その後、安倍晋三首相辞職後の首班指名選挙で衆議院は自民党の福田康夫、参議院は民主党の小沢一郎と衆参異なる指名になった。両院協議会で一致しなかったため、衆議院議決優越により福田が首相になった。
その後、自民党が反対する年金保険料流用禁止法案の野党賛成での参議院可決による衆議院送付、野党主導での守屋武昌前防衛次官に対する参議院における証人喚問の実施、56年ぶりの国会同意人事の参議院不同意による白紙化、補給支援特別措置法案、改正道路財源特例法案などの参議院否決またはみなし否決と51年ぶりの衆議院再議決権の行使による法案成立、日銀総裁の参議院不同意による戦後初の日銀総裁空席、財務省や金融庁の権限が一切書かれていない道路整備事業特別措置法を野党主導の参議院財政金融委員会への付託、後期高齢者医療制度廃止法案の野党主導の強行採決による参議院可決、参議院での福田首相に対する問責決議可決とこれに対抗する衆議院での内閣信任決議可決などが起こっている。
福田は対策として民主党との大連立を打診するも、民主党内の猛反発により実現せず却って与野党の対立姿勢を強める結果となった。結局ねじれによる国政運営の困難を理由に、福田は2008年9月に首相を辞任。これを受けた首班指名選挙では再び衆議院が自民党新総裁の麻生太郎、参議院が小沢を指名、両院協議会の不一致を経て麻生が首相となった。

関連項目

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