読み込み中...国際収支統計とは、一定期間における国(またはそれに準ずる地域)の対外経済取引(財・サービス・所得の取引、対外資産・負債の増減に関する取引、移転取引)を記録した統計である。
国際収支統計は、日本を含む世界のほとんどの国・地域において、IMF国際収支マニュアルに基づいて作成されているため、各国の経済取引関係、対外債権・債務の状況等を、比較することができる。
日本では、財務省および日本銀行(国際局国際収支課)によって作成公表されている。
財貨の輸出入をFOB価格で計上したもの。貿易統計をベースとするが、貿易統計が輸出をFOB価格、輸入をCIF価格で計上するのに対し、国際収支統計は輸出・輸入ともFOB価格で計上される。また、貿易統計が通関をもって取引を認識するのに対し、国際収支統計は所有権の移転をもって取引を認識するため、統計上の金額には違いが出る。
政府間の無償資金援助、国際機関への拠出金など、資産の一方的支払いを計上する。
資本移転(固定資産の取得・処分にかかる資金の移転等)、その他の資産の動きを計上。
政府通貨当局の管理下にある対外資産の増減。外為市場における市場介入による外貨の増減や、政府が保有する外債の利子の受取、円安による政府保有通貨の価値増加などによって増減する。
国際収支統計は、簿記と同様の複式計上方式をとっている点が特徴である。すなわち、取引が記録される際は必ず貸方と借方に同額の記帳がされる。
簿記の場合は、借方に資産の増加・負債の減少・経費の支出、貸方に負債の増加・資産の減少・収入の受取を計上するが、国際収支統計の場合も、これに類する計上方法を取っている。
ちなみに、国際収支統計では、簿記会計とは逆に、貸方を左に、借方を右に書くという慣例がある。
このように、貸方と借方に常に同額が計上される。統計上は、貸方はプラス、借方はマイナスとして表現される。
このため、外貨準備増減については、外貨準備が増加した場合は「マイナス」、減少した場合は「プラス」となり、印象的に不可解であるが、そういうルールであると理解するしかない。
複式計上により、経常収支+資本収支+外貨準備増減は常にゼロとなる。資本収支+外貨準備増減を「広義の資本収支」とすれば、この式は経常収支+(広義の)資本収支=0と書き表すことができる。ただし、実際には、統計把握上の問題から合計は合わないため、不整合は「誤差脱漏」として処理される。
したがって、新聞記事などで、「国際収支が悪化(改善)した」という表現がなされるが、国際収支はプラスにもマイナスにもならないという意味では、この表現は正しくない。また、悪化や改善という表現についても、そうなることが好ましいとか好ましくないとかいう価値観を前提としているという点で問題がある。「貿易収支(経常収支)が黒字化した」「貿易赤字(経常収支の赤字)が拡大(縮小)した」などと表現すべきである。
である(Y:国民総生産、C:消費、I:投資)。
この恒等式の意味するところは、国内における支出(内需、C+I)が、国民総生産 (Y) を超える場合は、右辺はマイナスとなるので、左辺(経常収支)も赤字となり、その逆の場合(内需が国民総生産を下回る場合)は経常収支は黒字となる、ということである。これが、シドニー・アレクサンダーが展開したアブソープション・アプローチ(吸収分析)理論の骨子である。
また、国民総生産から消費を引いたものは貯蓄 (S) なので(Y-C=S)、上記の式は、 Bc = S-Iと変形できる。すなわち、国内における投資が貯蓄を超える場合は経常収支は赤字、貯蓄が投資を超える場合は経常収支が黒字、ということである。
1980年代の日米貿易摩擦に関する議論では、日本の貯蓄率の高さが日本の経常収支黒字の原因であり、一方アメリカの貯蓄率の低さと、個人消費及び政府支出の高さ(財政赤字)がアメリカの経常収支赤字の原因ではないか、という議論が展開されていた。
ただし、上記の式は恒等式で常に等しいということを表す式であって、現実の経常収支は、国民総生産の水準、為替レート、金利水準などが貯蓄・投資の水準に影響を与えることで変動する。
経済の発展段階に伴って、国際収支動向が変化するという説。クローサーの発展段階説では、一国の国際収支は、次のような段階を経て発展する。
1. 未成熟の債務国:産業が未発達のため貿易収支は赤字、資本が不足するため海外資本を導入するので資本収支は流入超、投資収支は赤字2. 成熟した債務国:輸出産業が発達し、貿易収支が黒字化するが、過去の債務が残っているため所得収支が大幅赤字、結果的に経常収支は赤字。
3. 債務返済国:貿易収支黒字が拡大し、経常収支が黒字に転換。対外債務を返済できるようになる。これにより資本収支が流出超となる。
4. 未成熟な債権国:対外債務の返済が進み債権国となり、所得収支が黒字化。
5. 成熟した債権国:貿易収支が赤字に転換するが、過去の対外債権からの収入があり、所得収支が黒字のため、経常収支は黒字。
6. 債権取崩国:貿易収支の赤字が拡大し、経常収支が赤字に転落。対外債権が減少する。
2005年4月に経済財政諮問会議の専門調査会が取りまとめた「日本21世紀ビジョン」によると、2030年度の日本は、貿易収支は赤字になるが、中国等東アジアへの直接投資からの収益により所得収支の黒字が拡大し、これまでの輸出立国から投資立国、すなわち上記の「成熟した債権国」になるとされている。一国の経済規模としては、現在では通常国内総生産(GDP)が利用されるが、所得収支の黒字が拡大するとこれを含んだ国民総所得(GNI)の方が経済政策の目標としては適切であるという議論が起こっている。
戦後の貿易再開から昭和30年代にかけての日本では、国内の好景気が続くと、輸入が増え、外貨準備が底をついてしまうために、経済を引き締めて景気を後退させるという政策が行われていた。これを当時「国際収支の天井」と呼んだ。昭和40年代以降、輸出が拡大し、貿易黒字が定着すると、国際収支の天井問題は解消された。
現在の世界においては、特に急成長を続ける新興工業国において、輸入の拡大と経常収支赤字の拡大という問題が起こっているが、戦後の日本と異なり、外国からの投資を大規模に受け入れることによって国際収支をバランスさせている。しかしながら、短期資本の導入に頼り過ぎると、海外資本が一斉に引き上げたときに、通貨の暴落等の問題が起こる。これが1997年のアジア通貨危機の原因のひとつとされている。
(単位:億円)
| 経常収支 | 貿易・サービス収支 | 貿易収支 | 139,022 |
| (輸出) | 582,951 | ||
| (輸入) | 443,928 | ||
| サービス収支 | △37,061 | ||
| 貿易・サービス収支計 | 101,961 | ||
| 所得収支 | 92,731 | ||
| 経常移転 | △8,509 | ||
| 経常収支計 | 186,184 | ||
| 資本収支 | 投資収支 | 22,504 | |
| その他資本 | △5,134 | ||
| 資本収支計 | 17,370 | ||
| 外貨準備増減 | △172,675 | ||
| 誤差脱漏 | △30,879 | ||
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