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大雪山

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より

大雪山(だいせつざん)とは、北海道中央部にそびえる火山群の名称である。一つの山ではないことを明確にするため、「大雪山系」という呼称もしばしば使われる。大雪山系と言われる場合、広義には表大雪、北大雪、東大雪、十勝岳連峰を包含する大雪山国立公園の南北63km、東西59kmと広大な広さとなり、その面積は神奈川県とほぼ同じであるであるが、「大雪山」は本来、現在「表大雪」と呼ばれている、お鉢平を中心としたエリアを指す呼称であり、「大雪山系」がそのように使われることもある。「だいせつ」ではなく「たいせつ」と呼ばれることもある。先住民・アイヌは「ヌタップカウシペnutap-ka-us-pe」もしくは十勝岳連峰と合わせて「オプタテシケop-ta-tes-ke」と呼んでいた。これらのアイヌ語には逐語訳は可能なものの現在のところ、適切な訳がまだ見つかっていない。国指定特別天然記念物(天然保護区域)及び国指定大雪山鳥獣保護区(大規模生息地、面積35,534ha)に指定されている。

大雪山を成す山群

狭義の大雪山は、以下の山などから成る石狩川忠別川の上流部に挟まれた山塊をさす。

  • 旭岳(2,291m) - 北海道の最高峰 大雪山系の北部に位置する。(一部には、千島列島の阿頼度島(アライド島)の親子場山(阿頼度富士)(2,339m)を最高峰とする主張もある。)
  • 北鎮岳(2,244m)
  • 白雲岳(2,230m)
  • 愛別岳(2,113m)
  • 北海岳(2,149m)
  • 黒岳(1,984m)-5合目には、大雪山黒岳資料館が建っている。
  • 赤岳(2,078m)
  • 緑岳(2,019m)-別名:松浦岳
など

大雪山の地形と歴史

大雪山系の土台となっている基盤岩は海抜1000mに達している。その上に更新世初期に多量の火砕流が噴出した後、現在の地形を形作る火山活動が始まった。まず流動性の良い厚い溶岩流が噴出し、南部の高根ヶ原や北西部の沼ノ平などの広い高原が形成された。その後の噴火では流動性少ない溶岩に移行し、北鎮岳・黒岳・白雲岳などの溶岩円頂丘ができた。3万年前に大雪山の中心部で大きな噴火があり、大量の火砕流が東側に流出して台地を形成した。この台地を石狩川が浸食したのが層雲峡で、両岸の柱状摂理はこのときに堆積した溶結凝灰岩である。また噴火の中心部は大きく陥没してお鉢平カルデラが形成された。1万年前から西部で繰り返し噴火が起こり成層火山の旭岳ができた。旭岳は約5600年前に山体の一部が崩壊する噴火が起こって、現在見られる山容となった。旭岳は現在も盛んな噴気活動を行っている。 (写真参照)

自然

Wikipedia画像へのリンク(7月中旬の大雪山のお花畑、黄色はチングルマ、赤はエゾノツガザクラ)
これらの山々は約3万年前に大噴火したお鉢平カルデラの周辺に盛り上がっており、高山植物の宝庫である。 大雪山は北海道にあるため、日本アルプスより1,000m低い標高1,700mで高山地帯のお花畑となる。大雪山はこの高度領域が非常に広く、また山々がなだらかに広がっているため、日本最大の高山帯を形成している。地理的にもカムチャッカ、シベリア、日本の本州からの合流点となっているほか、温帯・寒帯の狭間でもあり小泉岳〜緑岳の永久凍土や多くの周氷河地形が残ることから高山植物の種類も豊富である。 その地理や気候風土から、日本国内では最も早く、例年9月15日前後に初冠雪を観測する。また、日本一早い紅葉の名所としても知られており、9月からチングルマナナカマドなどの紅葉を楽しむことができる。

大雪山系には、やや南にあるトムラウシ山(2,141m)、忠別岳(1,963m)も含める。この付近には「神遊びの沼」と言われる場所がある。ここでいう「神」とはアイヌ語でキムンカムイ(山の神)、つまりヒグマのことであり、ヒグマが多数出現する場所である。

地域区分

狭義の大雪山は下で述べる「東大雪」「北大雪」に対し「表大雪」とも呼ばれる。東大雪、北大雪を含めたものが広義の大雪山である。

なお、お鉢平の底部には、「有毒温泉」と呼ばれる温泉が湧いており、温泉とともに、強力な毒性を持つ硫化水素ガスが噴出しているため、立ち入り禁止となっている。お鉢平の北側の稜線から少し下った所、登山道に沿った渓谷の脇にも高温の湯が湧いている。ここは人間も入湯可能で、中岳温泉と呼ばれて最近の秘湯ブームで訪れる人が増えている。

東大雪

Wikipedia画像へのリンク(大雪山旭岳とふもとに広がるお花畑)
やや南東にある以下の山群を東大雪と呼ぶ。昔は、「裏大雪」とも呼ばれていた。

北大雪

石狩川を挟んで北にあるニセイカウシュッペ山 (1,883m) などの山々を北大雪と呼ぶ。

「だいせつ」か、「たいせつ」か

大雪山の名を初めて著した書物は明治32年の「日本名勝地誌」とされる(小泉1918)。この書では「たいせつざん」と振り仮名があった。明治45年発行の「帝國地名辭典」には「たいせつざん」の見出しで掲載されている。国立公園名では「だいせつざん」とされ、大雪山固有の動植物の和名も「ダイセツ」を付けるものがほとんどであり、主なものにダイセツトリカブト、ダイセツタカネヒカゲ、ダイセツオサムシ、ダイセツタカネフキバッタなどの例があげられる。外国の研究者にローマ字で大雪山やこれらの生物を紹介する際、こうした整合性はある程度重視しなければならない。一方で大雪山を「たいせつざん」と呼ぶ例も決して定着していないわけではない。「たいせつざん」は、観光業者が濁音の混ざる「だいせつざん」の荒々しいイメージを避け、清音の柔らかなイメージを強調するために用い始められたとの説もあるが、「大雪山」の名を世に知らしめることになった大正7年の、大雪山の名付け親とも言うべき植物学者小泉秀雄の論文(小泉1918)では読み方にまで言及しておらず、旧制上川中学(現在の北海道旭川東高等学校)の校歌で学校創立(明治36年)以来「大雪山」と歌われていることを、この山域を大雪山と呼ぶべき論拠の一つとしているが(実際の作詞は明治40年)、その歌詞では「たいせつざん」である。現在においても、「大雪山」の名は、どの読み方を以って正式と決めるほどには成熟していない。

関連項目

参考文献

  • 小泉秀雄「北海道中央高地の地学的研究」『山岳』20号、205-452頁、1918年。
  • 松原岩五郎「日本名勝地誌 第9編 北海道之部」博文堂、108頁、1899年。
  • 太田爲三郎編『帝國地名辭典 下巻』三省堂、1912年、896頁。
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