読み込み中...生活保護(せいかつほご)とは政府・自治体が経済的に困窮する国民に対して生活保護費を支給するなどして最低限度の生活を保証する制度。
生活保護とは憲法第25条に規定する理念(生存権)に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに自立を助長することをいう。
これらの扶助は、要保護者の年齢、性別、健康状態等その個人または世帯の生活状況の相違を考慮して、1つあるいは2つ以上の扶助を行われる。
生活保護にかかる費用は平成19年度において約2兆7千億円となっており増加中である。高齢者の生活保護受給世帯が増加傾向であり、今後、団塊世代の生活保護受給世帯の増加に伴い、倍増していくことが確実である。
| 東京都区部など | 地方郡部など | |
|---|---|---|
| 標準3人世帯(33歳、29歳、4歳) | 234980円 | 199380円 |
| 高齢者単身世帯(68歳) | 80820円 | 62640円 |
| 高齢者夫婦世帯(68歳、65歳) | 121940円 | 94500円 |
| 母子世帯(30歳、4歳、2歳) | 177900円 | 142300円 |
生活保護の実施機関は、原則として、都道府県知事、市長及び福祉事務所を管理する町村長であり、これらの事務は法定受託事務である。なお、福祉事務所を管理していない町村(ほとんどの町村)においては、その町村を包括する都道府県知事がこの事務を行う。
また、都道府県知事、市町村長の下に社会福祉主事が置かれ、知事・市町村長の事務の執行を補助し、民生委員は市町村長、福祉事務所長又は社会福祉主事の事務の執行に協力するものとされる。
社会福祉法では、生活保護を担当する現業員、いわゆるケースワーカーを市部では被保護世帯80世帯に1人、町村部では65世帯に1人を配置することを標準数として定めている(社会福祉法第16条)。
これら実施機関では原則として厚生労働省が示す実施要領に則り保護を実施しているが、厚生労働省は実施要領を示すだけであって個別の事例の判断は一切行わない(監査や再審査請求を除く)。そのため、法及び各種通達等において定めることができない事例については、法の趣旨と実施機関が管轄する地域の実情などを勘案して判断される。
都道府県・市町村は、生活保護を行うため、保護施設を設置することができる。なお、市町村が保護施設を設置する場合、都道府県知事への届出が必要である。また、保護施設が設置できるのは、都道府県・市町村のほか、社会福祉法人と日本赤十字社だけである。
1946年の旧生活保護法においては全ての在住者を対象としたが、1950年の改訂で国籍条項が加わり、日本国内に住む日本国籍を持つ者のみが対象とされた。
その後1954年の厚生省社会局長通知「正当な理由で日本国内に住む外国籍の者に対しても、生活保護法を準用する」を根拠として、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者などの日本国への定着性が認められる外国人に対して、予算措置という形で保護費の支給を実施している。このことから、外国籍の者は生活保護法上の行政処分に対する行政不服審査法に基づく不服申立てはできないとされている。
厚生労働省の社会福祉行政業務報告によれば、生活保護を受けている世帯の数(被保護世帯数)は、1980年度の746,997世帯から1992年度には585,972世帯にまで減少していたが、その後増加に転じ2004年度は998,887世帯と1980年度の約1.3倍に増加している。2005年度には、一月の平均被保護世帯数が100万世帯を突破、増加傾向にある。
被保護世帯を世帯類型別に見ると、高齢者世帯、障害者・傷病者世帯、母子世帯、その他の生活困窮世帯と分けることができ、1980年頃から1990年代半ばまでは減少傾向にあったが、バブル崩壊による経済の悪化によって、現在は増加に転じている。被保護世帯の中で、高齢者世帯は趨勢的に増加しており、1980年度は全体の30.2%であったが2004年度には46.6%とほぼ半数を占めるようになっている。
生活保護世帯の増加は2001年に発足した小泉内閣の下で、政府が進めてきた構造改革によって所得格差が拡大していることの証拠として指摘されることがある。しかしバブル崩壊による景気後退によって既に被保護世帯数の増加が起こっていたことや、人口構造の高齢化による高齢者世帯での被保護世帯数の増加という要因もあり、被保護世帯数の増加をもって格差が拡大していると言うことは難しい。とは言え、そもそも生活保護を論じる際に格差に問題を矮小化することが疑問視されるべきである。生活保護は、政府が日本社会において生活困窮にあると認定することを意味するのであり、それは格差問題ではなく貧困問題である。
生活保護をめぐる訴訟として「朝日訴訟」が有名である。
不正受給は、全国で多数存在しているといわれる。不正受給で逮捕されるのは氷山の一角である。生活保護の財源は、国民の税金であり、これに関しては納税者からの不満が多い。
水際作戦といわれ、本来なら生活保護受給できるはずなのに、職員が威圧的に対応し「相談」に留め、申請をさせないものである。これは、憲法25条に違反する不当行為である。
従来からあった問題であるが、ここ数年(平成17年以降)においても、生活保護担当職員が傘の先で突かれたり(東京都)、出勤途中に顔を刃物で切られたり(岡山市)、泥酔して訪れた受給者に刃物で刺されたり(神戸市)、果ては刺殺されたり(長崎県)といった行政対象暴力が頻発している。
最近(平成19年度)では福祉事務所へ刃物を持った男性が訪れて一般市民も巻き込む騒ぎとなり、福祉事務所職員が常備されていたさすまたで男性を制圧した(熊本市)。このように、暴行・傷害にまでは至らないまでも、刃物や木刀・バールなどによって福祉事務所職員や市役所というパブリックスペ−スの安全が脅かされる状況は全国的に見られ、さすまたなど防犯用品を常備している福祉事務所も少なくない。
上記の各事例は新聞報道のあったものばかりであり、実際に発生した事件は更に多数に上ると言われている。特に熊本市の事件と同様の事例は、報道されることが無いだけで、実際には頻発している。
2005年、国(厚生労働省)と地方との間で「三位一体の改革」の一環として、生活保護費の国と地方自治体との負担率を変更しようとの議論が行われた。
現制度では支給される保護費について国3/4、地方1/4の割合で負担しているが、これを国1/2、地方1/2に変更しようとするものである。さらに住宅扶助の一般財源化(地方交付税交付金に含めて国が交付)、保護基準(最低生活費)を地方が独自に設定することができるようにしようとした。
厚生労働省の主張は、生活保護行政事務の実施水準が低いところは保護率が高い水準にあり、保護費の負担を地方に大きく負わせることで生活保護行政事務の実施水準を向上させざるを得ない状況にして、国と地方を合わせた保護費の総額を減らそうというものである。
しかしながら地方六団体は、憲法第25条で国が最低生活の保障を責任を持っていること、最低生活を保障するという事務は地方自治体に裁量の幅がほとんど無いこと(幅を持たせるとすれば、最低生活費を下げるあるいは上げるということになる)、仮に現段階での地方の負担増に合わせて税源を移譲されたとしても今後保護世帯数が増加すればその分が総て地方の負担となること、等から猛反発した。福祉行政報告例第1表〜第4表並びに第6表の生活保護関連統計の国への報告を停止する行動に出た自治体もあった。
保護率が高い地域を都道府県ごとにみると、北海道、青森、東京、大阪、福岡、沖縄等であり、地域経済が活発ではない地域(北海道、青森、沖縄)、過去の炭坑閉鎖の影響を引きずる地域(北海道、福岡)が主である。その反面、東北地方の中でも青森県が突出して保護率が高い、四国では保護率が高い県(高知、徳島)と低い県(香川、愛媛)に明確に分かれる等、単に経済状況だけでは説明しきれない面もある。
逆に保護率が最も低い県は富山県であり次いで島根県である。理由として両地域は保守的で生活保護を恥と見る人々が多い事があげられる。また富山県は持ち家率や世帯所得が日本一高くそもそも生活保護の対象となる家庭が少ないと予想される。
保護率の高低は、経済状況だけでなくその地域の世帯の状況(1世帯当たりの世帯員数、3世代同居比率等)や県(道)民性、住民の意識(権利として主張する、恥だから受けたくない)等様々な要因が絡み合い、一概に言い切れるものではない。
なお、この問題については後に撤回され、現行通りの負担割合とすることで決着した。